炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎とクローン病を中心とする、再燃と寛解を繰り返す慢性の腸の炎症性疾患で、どちらも国の指定難病に分類されています。
近年、5-ASA製剤に加えて生物学的製剤やJAK阻害薬など多様な薬剤が利用可能となり、治療選択肢が大きく広がっています。
IBDの概要と特徴
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)には、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)とクローン病(Crohn’s disease:CD)が含まれます。
いずれも原因不明の慢性炎症性腸疾患で、下痢・血便・腹痛などを伴い、再燃と寛解を繰り返す難治性の病気です。
潰瘍性大腸炎は主に大腸粘膜に連続性に炎症が広がる疾患で、クローン病は口腔から肛門まで消化管全域に不連続な炎症・潰瘍が生じうる疾患とされています。

原因・発症機序と診断
原因は完全には解明されていませんが、
- 遺伝的素因
- 腸内細菌叢
- 免疫異常(通常の腸内細菌に対する異常な免疫応答)
診断は、
- 症状(下痢、血便、腹痛、体重減少など)
- 血液検査(貧血、炎症反応)
- 画像検査(主に大腸内視鏡・小腸内視鏡/造影)
で特徴的な所見を確認し、加えて内視鏡や手術時に採取した組織の病理検査、肛門病変の有無などを組み合わせて行います。
基本治療:5-ASA・ステロイド・免疫調整薬
治療の基本は、疾患の重症度・病変範囲・再燃頻度などに応じて段階的に選択されます。
- 生活指導・食事療法
- 症状に応じた食事調整・栄養療法など
- 5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤
- ステロイド剤(寛解導入:短期での使用)
- 免疫抑制(調整)薬
これらで寛解導入・維持を図り、効果が不十分な場合や中等症〜重症例で生物学的製剤・新規経口薬が検討されます。
生物学的製剤・JAK阻害薬など
近年は、炎症に関与するサイトカインや接着分子を標的とする多くの生物学的製剤・分子標的薬・JAK阻害剤など経口治療(飲み薬)可能な低分子化合物が使用可能になっています。
当院で使用可能なものには以下のものがあります。
| 作用機序 | 製剤名(一般名) | 特徴 |
|---|---|---|
| 抗TNFα製剤 | レミケード®(インフリキシマブ) ヒュミラ®(アダリムマブ) シンポニー®(ゴリムマブ) | ・炎症を起こす物質「TNFα」の働きを抑える ・炎症の程度が強くステロイドなどで炎症を抑えられない場合に使用 ・ヒュミラ®、シンポニー®は自己での皮下注射が可能 |
| 抗α4β7インテグリン 抗体製剤 | エンタイビオ®(ベドリズマブ) | ・α4β7インテグリンの働きを邪魔してリンパ球が腸に移動してくるのを防ぎ、炎症を抑える ・炎症の程度が強くステロイドなどで炎症を抑えられない場合に使用 |
| 抗IL-12/23p40抗体製剤 | ステラーラ®(ウステキヌマブ) | ・炎症に関与するIL(インターロイキン)のうちIL-12とIL-23を抑える(IBD:潰瘍性大腸炎とクローン病で関係するとされる) ・中等度~重症のクローン病または潰瘍性大腸炎に使用 |
| α4インテグリン阻害剤 | カログラ®(カロテグラストメチル) | ・経口剤(1日3回) ・α4インテグリンを標的とし、リンパ球が腸に移動してくるのを防ぎ、炎症を抑える ・中等度の炎症で5-ASA内服で炎症を抑えられない場合に使用 |
| 抗IL-23p19抗体製剤 | スキリージ®(リサンキズマブ) | ・炎症に関与するIL(インターロイキン)のうちIL-23を抑える ・中等度~重症のクローン病または潰瘍性大腸炎に使用 ・維持療法での効果減弱時にレスキュー(強化療法)が可能 |
| 抗IL-23p19抗体製剤 | オンボー®(ミリキズマブ) | ・炎症に関与するIL(インターロイキン)のうちIL-23を抑える ・中等度~重症のクローン病または潰瘍性大腸炎に使用 ・維持療法での効果減弱時にレスキュー(強化療法)が可能 |
| 抗IL-23p19抗体製剤 | トレムフィア®(グセルクマブ) | ・炎症に関与するIL(インターロイキン)のうちIL-23を抑える ・中等度~重症のクローン病または潰瘍性大腸炎に使用 ・維持療法での効果減弱時にレスキュー(強化療法)が可能 |
| ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤 | ゼルヤンツ®(トファシニブ) ジセレカ®(フィルゴチニブ) リンヴォック®(ウパダシチニブ) | ・白血球内でヤヌスキナーゼ(JAK)というサイトカイン産生に重要な酵素の働きを抑制し、サイトカイン産生を抑える ・経口薬 ・中等度~重症の潰瘍性大腸炎で使用 ・リンヴォック®は中等度~重症のクローン病でも使用可能になりました |
| S1P受容体作動薬 | ゼポジア®(オザニモド塩酸塩) ベルビシティ®(エトラシモドL-アルギニン) | ・リンパ球をリンパ組織内に留まらせることで炎症部位へのリンパ球の浸潤を抑える ・中等度~重症の潰瘍性大腸炎に使用 ・経口薬(1日1回) |
その他の治療と指定難病
薬物療法以外に、炎症や免疫異常を和らげる目的で血球成分除去療法(顆粒球・単球吸着療法など)が行われることもあります。
多くは内科的治療でコントロール可能ですが、重症例や難治例では外科手術(腸切除など)が必要になることもあります。
潰瘍性大腸炎、クローン病は厚生労働省より指定難病とされていますが、当院院長は大阪府より難病指定医に認定されています。