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腹部膨満・便通異常・過敏性腸症候群

腹部膨満とは

腹部膨満(お腹の張り)は、消化器診療で日常的によく見られる症状の一つです。
心因性に感じられる場合もありますが、まずは器質的疾患の有無を評価することが重要です。

病因の大まかな分類

腹部膨満の原因を考える際には、病変の所在を次の3つに大別して考えます。

  • 管腔臓器(胃・腸など)
  • 実質臓器(肝臓・膵臓・腎臓など)
  • 腹腔内(腹水・腫瘍など)

この分類を意識することで、必要となる検査や緊急性の判断がしやすくなります。

管腔臓器が疑われる場合:腹部レントゲン

腸閉塞や消化管運動障害、便秘など管腔臓器の異常が疑われる場合には、腹部レントゲン検査が有用です。

腹部レントゲンでは、

  • 腸管ガスの量と分布
  • 便塊の有無
  • 腸管の拡張や鏡面像

を確認することで、腸閉塞や重度の便秘、消化管運動障害などの診断に役立ちます。

実質臓器・腹腔内が疑われる場合:腹部超音波

肝臓・脾臓・膵臓・腎臓などの実質臓器や、腹水・腹腔内腫瘍などの異常が疑われる場合には、腹部超音波検査(エコー)が有用です。

腹部超音波検査では、

  • 肝腫大・脾腫などの有無
  • 腹水の有無
  • 膵腫大や周囲の液体貯留(急性膵炎の評価など)
  • 腫瘍性病変の有無

を非侵襲的に評価できます。

内視鏡検査の役割

腹部膨満の背景に食道・胃・小腸・大腸の器質的疾患が疑われる場合には、症状や所見に応じて次の内視鏡検査を追加します。

  • 上部消化管内視鏡(胃カメラ):逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、胃癌など
  • 大腸内視鏡(大腸カメラ):大腸ポリープ、大腸癌、炎症性腸疾患、狭窄など

腹部レントゲン・腹部超音波と組み合わせて評価することで、腹部膨満の原因をより正確に絞り込むことができます。

便通異常(下痢、便秘)

下痢:急性と慢性の見極め

下痢の診断では、急性(おおむね2週間以内)か慢性(4週間以上持続)かの判断が重要です。
急性下痢の約9割は感染が原因とされ、食事内容や渡航歴、発熱や腹痛の有無などの問診がポイントになります。

実際には、便培養の結果が判明する頃には多くの方がすでに回復しているため、血便や発熱、急性腎障害など、O157などの重篤な感染症が疑われる場合を除き、便培養検査は実施しません。
代わりに、血液検査でCRPや白血球の値を確認し、炎症の有無を判断します。
腹痛が強い場合には、腹部超音波検査で腸管壁の厚み、リンパ節の腫れ、腹水の有無などを調べ、炎症の程度を評価します。

慢性下痢の主な原因と検査

4週間以上続く慢性下痢の原因は多岐にわたり、以下のような疾患が挙げられます。

  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)
  • 吸収不良症候群
  • 腸管の慢性感染症
  • 大腸腫瘍 など

診断にあたっては、

  • 内視鏡検査(上部・下部)
  • 腹部超音波検査
  • 消化管造影検査
  • 腹部CT
  • 血液検査

などで器質的疾患を除外し、明らかな異常がなければ機能性障害として過敏性腸症候群を考えます。

便秘:種類と病態の整理

便秘は国民の約3割にみられるありふれた症状ですが、病態に応じた適切な治療が行われていないことも多いとされています。
慢性便秘は大きく器質性便秘機能性便秘に分けられ、機能性便秘は以下の3タイプに分類されます。

  • 結腸通過時間正常型(Normal transit)
  • 結腸通過時間遅延型(Slow transit)
  • 便排泄障害型(排便困難型)

機能性便秘の各タイプ

結腸通過時間正常型

排便回数や便秘の自覚はあるものの、結腸通過時間は正常なタイプです。
多くは食物繊維や水分の不足、生活習慣の乱れが関与し、食物繊維により便を軟化・増量させることで良好な反応を示すことが多いとされています。

結腸通過時間遅延型

腸蠕動運動の低下により結腸通過時間が遅延するタイプで、排便回数が少なく、便が硬くなりやすい便秘です。
便塊が直腸までなかなか輸送されないため便意を感じにくくなることが多く、食物繊維の過剰摂取でかえって腹部膨満や症状悪化を招く場合があり注意が必要です。

便排泄障害型

直腸内の便はあるものの、肛門括約筋の協調不全などにより排出がうまくいかないタイプです。
浣腸や刺激性下剤の乱用などで直腸肛門反射が弱くなると、便が肛門内に充満しても内肛門括約筋が十分に弛緩せず、排便困難を生じます。

便秘治療薬の変遷と新しい薬剤

従来、日本では

  • 刺激性下剤(センナ、アロエ、大黄など)
  • 塩類下剤(酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤)

が長く使われてきました。
しかし、刺激性下剤の長期連用では大腸メラノーシスや腸管運動低下・腸管拡張などが問題となることがあり、適切な使用が重要です。

近年「慢性便秘症診療ガイドライン2017」および改訂版の便通異常症ガイドラインでは、

  • 浸透圧性下剤(塩類・糖類・PEG製剤など)
  • 上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチドなど)
  • 胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロキシバット)

強く推奨(推奨度1、エビデンスレベルA相当)される治療薬として位置づけられています。

代表的な新しい薬剤には次のようなものがあります。

  • ルビプロストン(アミティーザ®):上皮機能変容薬
  • リナクロチド(リンゼス®):上皮機能変容薬
  • エロキシバット(グーフィス®):胆汁酸トランスポーター阻害薬(広義の上皮機能変容薬として扱われることもあります)

浸透圧性下剤としては、従来のマグネシウム製剤に加え、

  • モビコール®(PEG製剤)
  • ラクツロース類から改良された製剤(例:ラグノスNFゼリー®など)

といった新しい薬剤が登場し、良好な成績が報告されています。

漢方薬の位置づけと個別化治療

漢方薬は慢性便秘症ガイドラインで推奨の強さ2、エビデンスレベルCとされていますが、大建中湯をはじめ多くの症例・論文で有効性が示され、日本でも広く使用されています。
薬剤の効果には個人差が大きいため、年齢・腎機能・併用薬などの背景因子を考慮しつつ、実際の使用感を確認しながら薬剤の選択・変更・調整を行うことが重要です。

器質性疾患の除外と大腸内視鏡の勧め

便秘だからといってすべてが機能性とは限らず、大腸癌や狭窄などの器質性疾患が隠れていることもあります。
特に以下の方は、大腸内視鏡検査の受検が強く勧められます。

  • 40歳以上で大腸内視鏡を一度も受けたことがない方
  • 過去に大腸ポリープを指摘・切除され、その後3〜5年以上経過している方

便秘・下痢などについては下記(外部:ヴィアトリス製薬サイト)もご参照下さい。

過敏性腸症候群とは

通常の大腸内視鏡、血液検査、CTなどで器質的異常を認めないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感を伴って便通異常が長く続く疾患を過敏性腸症候群(IBS)といいます。
日本では有病率がおよそ10〜15%とされ、報告によっては14.2%とされるなど、非常に頻度の高い病気です。

タイプ分類と特徴

便通のパターンにより、IBSは以下の3タイプに分類されます。

  • 便秘型
  • 下痢型
  • 交代型(下痢と便秘を繰り返す型)

男性では下痢型が、女性では便秘型が多い傾向があると報告されています。

病態と原因の考え方

IBSでは主に次の3つの異常が関与すると考えられています。

  • 消化管運動異常(腸の動きの乱れ)
  • 消化管知覚過敏(痛みを感じやすい状態)
  • 心理的要因・ストレスなど

一部の患者では感染性腸炎の後に発症する「感染後IBS」が知られており、免疫異常や炎症の関与も指摘されています。
心理社会的ストレスは症状を悪化させる大きな要因であり、環境・ストレスの評価も重要です。

Rome IV診断基準と検査

IBSの診断には、Rome IV基準が用いられます。

最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の2項目以上を満たすこと。

  • 排便と症状が関連する
  • 排便頻度の変化を伴う
  • 便性状(形)の変化を伴う

期間としては、6ヶ月以上前から症状があり、直近3ヶ月間は上記を満たすことが条件です。

一方で、診断にあたっては必ず

  • 大腸癌
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)

といった器質的疾患を除外することが不可欠であり、大腸内視鏡などの検査が推奨されます。

生活習慣・ストレスへのアプローチ

治療の第一歩は、生活習慣の見直しと増悪因子の調整です。

  • 偏食や食事量のアンバランス
  • 夜食・不規則な食事
  • 睡眠不足
  • 心理社会的ストレス

などがあれば、可能な範囲で改善を図ります。
また、プロバイオティクス(乳酸菌・酪酸菌製剤)も症状改善に有用とされます。

IBSに対する主な薬物治療

a. 高分子重合体

ポリカルボフィルカルシウム(ポリフル®)などの高分子重合体は、小腸・大腸で水分を吸収して保水し、便の水分量を適正化・容積を増加させます。
下痢型・便秘型いずれにも用いやすく、IBSのベースとなる治療薬と位置づけられています。

b. 5-HT₃受容体拮抗薬

ラモセトロン塩酸塩(イリボー®)などの5-HT₃受容体拮抗薬は、

  • 腸管蠕動運動の抑制
  • 腸管内の水分移動の調整

により下痢を抑え、便形状・便意切迫感・腹痛を改善させる薬です。
主に下痢型IBSに対する有効な選択肢とされています。

c. 抗コリン薬

チキジウム臭化物(チアトン®)などの抗コリン薬は、腸管運動の過度な亢進を抑制することで、腹痛や下痢症状の改善に寄与します。
下痢型IBSで、他の薬剤と併用されることもあります。

d. 便秘治療薬(便秘型IBS)

従来は

  • 浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど)
  • 刺激性下剤(センノシド製剤、ピコスルファートなど)

が用いられてきましたが、近年は上皮機能変容薬という新しい作用機序の薬剤が利用可能となりました。

慢性便秘症診療ガイドラインや便通異常症診療ガイドラインでは、以下が強く推奨されています。

  • 上皮機能変容薬
    • クロライドチャネルアクチベーター:ルビプロストン(アミティーザ®)
    • グアニル酸シクラーゼC受容体作動薬:リナクロチド(リンゼス®)
    • 胆汁酸トランスポーター阻害薬:エロキシバット(グーフィス®)
  • 浸透圧性下剤
    • マグネシウム製剤
    • ポリエチレングリコール製剤:モビコール® など

これらはいずれも便秘型IBSに対しても使用可能であり、症状や背景に応じて選択されます。

心理的アプローチとその他の治療

プロバイオティクス(ビオフェルミン®、ラックビー®、ビオスリー®、ミヤBM®など)は、腸内環境の是正を通じてIBS症状を軽減する可能性が示されています。
それでも症状が強い場合には、抗不安薬や抗うつ薬を併用し、腹痛・不安・ストレスへの対応を行うことも検討されます。
また、症状が持続したり、心理的要因の関与が強い場合には、心療内科や精神科への受診をご紹介することもあります。

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