肝嚢胞・肝良性腫瘍
肝嚢胞とは
肝嚢胞は、肝臓に液体のたまった袋状の構造ができる病気で、健診の腹部超音波検査で偶然見つかることが多い良性の変化です。
頻度は報告により差がありますが、数%〜2割程度で認められるとされ、大きさも数mmから20cmを超えるものまでさまざまです。
診断と検査
肝嚢胞の診断には腹部超音波検査がもっとも有用で、境界明瞭・内部が無エコー・後方エコー増強といった特徴的な所見を示します。
一般的には超音波検査だけで十分ですが、嚢胞内出血や感染などが疑われ、内部が充実性腫瘍のように見える場合には、造影CTやMRIで詳しく評価することがあります。
経過と治療方針
多くの単純性肝嚢胞は悪性化することはまれで、自覚症状がなければ定期的な経過観察のみで問題ないとされています。
一方で、嚢胞が大きくなり腹部圧迫感や体位による違和感(仰向けで苦しいなど)を来したり、嚢胞内感染・出血などの合併症が生じた場合には治療の対象となります。
治療の選択肢
症状や嚢胞の大きさ・位置によって、次のような治療が検討されます。
- 超音波ガイド下穿刺:嚢胞に針を刺して中の液体を吸引し、内容量を減らす
- 硬化療法:穿刺後に無水エタノールなどの硬化剤を注入し、嚢胞の再拡大を防ぐ方法
- 外科手術:開窓術(嚢胞の一部を開放)や部分肝切除術など、大きな嚢胞や再発例・複雑な嚢胞で検討
自覚症状の有無、嚢胞の増大傾向、画像上の性状などを総合的に判断し、「そのまま経過観察でよいか」「治療を行うべきか」を決めていくことが大切です。
肝嚢胞の超音波画像:黄矢印

右:パワードプラ(血流のある部位は赤色や青色に表示される)で血流を認めず
肝良性腫瘍とは
肝良性腫瘍は、肝臓にできる「がんではないしこり」の総称で、多くは健康診断の超音波検査などで偶然見つかり、自覚症状や肝機能異常を伴わないことがほとんどです。
悪性腫瘍(肝細胞癌など)のように周囲へ浸潤したり転移したりすることはまれですが、画像上での鑑別が重要になる場合があります。
肝血管腫
肝血管腫は、肝臓の良性腫瘍の中で最も頻度が高いタイプで、血管が集まって血豆状になったような構造をとる病変です。
超音波検査では境界明瞭で高エコー(白っぽく)に描出されることが多く、小さいものは経過観察のみでよいことがほとんどですが、大きなものでは肝細胞癌との画像上の鑑別が難しく、造影CTや造影超音波検査などが役立ちます。
限局性結節性過形成(FNH)
限局性結節性過形成(Focal Nodular Hyperplasia;FNH)は、肝組織の一部が結節状に再生・増殖したような病変で、多くは良性と考えられています。
健康診断などで肝腫瘍として見つかり、造影CTでは肝細胞癌と似た造影パターンを示すことがありますが、造影超音波検査やEOB-MRI(造影MRI)などの詳細な画像検査により、より正確な診断が可能です。
治療と経過観察の考え方
肝血管腫やFNHを含む多くの肝良性腫瘍は、悪性化が非常にまれで、症状がなく大きさの変化も乏しい場合には、定期的な画像検査による経過観察のみで十分とされます。
一方で、腫瘍が大きくなって周囲臓器を圧迫して症状が出る場合や、悪性腫瘍との鑑別がつかない場合には、専門医による詳しい評価のうえで追加検査や外科的治療が検討されることがあります。
肝血管腫の腹部超音波画像

黄〇内に周囲よりやや高エコー(白い)の円形の腫瘤が見られます。