ピロリ菌感染症・機能性ディスペプシア
ピロリ菌感染症とは
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ/Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に生息するらせん形の細菌です。
胃は強い酸(胃酸)に満たされているため、かつては細菌は存在しない臓器と考えられていました。
しかし、ピロリ菌の発見以降、研究の進展によりこの菌が胃炎・胃潰瘍・胃癌などに深く関与していることが明らかになりました。
感染経路と感染時期
- 感染は主に幼少期(0〜4歳ごろ)に起こるとされています。
- 一度感染すると、除菌治療をしない限り胃の中に棲み続ける傾向があります。
感染しても、多くの人は自覚症状がありません。しかし、感染が長く続くと胃の粘膜全体に炎症が広がり、
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎(慢性胃炎)へと進行することがあります。
ピロリ菌と関連する疾患
ピロリ菌感染により、次のような疾患を引き起こすことが知られています。
- 胃炎(急性・慢性)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 萎縮性胃炎
- 胃癌
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
除菌治療について
除菌が推奨される理由
ピロリ菌の除菌が成功すると、これらの疾患の発症リスクを大幅に低減できます。
ただし、完全にゼロになるわけではないため、除菌後も定期的な内視鏡検査が必要です。
(胃炎が進行している方は年1回程度が目安です。)
除菌療法の対象(保険適用)
日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、
すべてのピロリ菌感染者に除菌療法を推奨しています。
保険適用の対象は次の通りです:
- ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
- 胃潰瘍または十二指腸潰瘍
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
- 早期胃癌に対する内視鏡的治療後
健康保険での除菌療法は最大2回まで可能です。
3回目(3次除菌)や抗生剤アレルギー(特にペニシリンアレルギー)のある場合は、自費での治療が可能です。
当院の特徴
当院では
- 日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医(院長・副院長)が診療を担当。
- 3次除菌治療にも対応しています。
へリコバクター・ピロリ感染胃炎の内視鏡所見

- 左上:萎縮
- 右上:鳥肌胃炎(若年者に多い所見)
- 左中:粘膜襞肥大、蛇行、白濁粘液付着
- 右中:黄色腫
- 左下:点状発赤
- 右下:腸上皮化生(前癌病変として注意が必要)
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)
概要
機能性ディスペプシアとは、内視鏡検査などで原因となる異常が見つからないにもかかわらず、
上腹部の痛みや胃もたれなどの不快感が続く疾患です。
一般成人や健診アンケートでは、約6.5〜20%に認められるとされています。
症状が持続すると日常生活やQOL(生活の質)に大きな影響を与えます。
病態と要因
- 胃の運動機能異常
- 内臓知覚過敏
- 精神・心理的ストレス
――これらが複雑に関与して発症すると考えられています。
治療
病態が多因的で個人差も大きいですが、以下の薬剤がガイドライン(機能性消化器疾患診療ガイドライン2021)で推奨されています:
- 酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬、ヒスタミンH₂受容体拮抗薬)
- アコチアミド(アコファイド®)
- 六君子湯(漢方薬)
当院では症状に合わせてこれらを組み合わせ、個別に最適化した治療を行っています。
2013年に登場したアコチアミドは、新しい選択肢として良好な効果を上げています。