ウイルス性肝炎(B型、C型)
B型・C型肝炎はどちらも血液を介して感染するウイルス性肝炎ですが、日本では母子感染対策や高性能な抗ウイルス薬の登場により、治療成績は大きく改善しています。
一方で、発癌リスクが完全にゼロになるわけではないため、治療後も定期的なフォローが重要です。
B型肝炎とは
日本のB型肝炎ウイルス(HBV)持続感染者は約110〜140万人と推計され、その多くは母子感染防止策導入以前の母子感染が背景とされています。
乳幼児期に感染すると無症候性キャリアとして長期にウイルスが残存し、思春期〜成人期に慢性肝炎へ移行する例が一部にみられます。
B型慢性肝炎では、約一部の症例が慢性肝炎から肝硬変・肝細胞癌へ進展するため、長期フォローと治療介入が重要です。
治療の基本方針
HBVはDNAウイルスで肝細胞内の核に組み込まれるため、「完全排除」は困難で、治療目標は肝炎活動性と線維化の抑制、肝不全・肝癌の予防に置かれます。
主な抗ウイルス療法は以下です。
- インターフェロン(Peg-IFN:ペガシス®など)
皮下注射・投与期間は24〜48週の期間限定
治療中止後もセロコンバージョン例では効果持続が期待できるが、副作用は比較的多く、効果が期待できる観点からも35歳以下が望ましいとされます。 - 核酸アナログ製剤(ETV・TDF・TAFなど)
経口投与・原則長期継続
代表薬:ETV(エンテカビル:バラクルード®)、TDF(テノホビルDF:テノゼット®)、TAF(テノホビルAF:ベムリディ®)。
強力なウイルス抑制効果と安全性があり、現在の主力薬です。薬剤耐性はまれですが、基本的に長期内服が前提となります。
医療費助成・給付金など
昭和23〜63年の集団予防接種などでの注射器連続使用によるB型肝炎持続感染者には、国の給付金制度があります(厚労省B型肝炎対策)。さらに、各都道府県でB型肝炎のインターフェロン治療や核酸アナログ治療に対する医療費助成制度が設けられていますので当院でご相談下さい。
感染経路
過去には母子感染、注射器の使い回し、汚染血輸血などが主な感染源でしたが、ワクチン普及と検査の徹底により、現在これらによる新規感染は大きく減少しています。
現在の主な感染経路は
- 性交渉
- ピアス・入れ墨などの不十分な器具消毒
- 注射器の共用(違法薬物使用など)
が挙げられます。
予防策
C型肝炎とは
日本のC型肝炎ウイルス(HCV)感染者は約190〜230万人と推計され、高齢者ほど感染率が高いとされています。
HCVは主に血液を介して感染し、過去の輸血・血液製剤・注射器使用が主な原因でしたが、現在は輸血用血液のスクリーニングや医療環境整備により新規感染は大きく減少しています。
HCVはB型より感染力が弱く、通常の性交渉による感染リスクは高くありませんが、針刺し事故やピアスなどでの血液曝露による感染は注意が必要です。
治療の変遷と現在の主流
かつてはIFN注射+リバビリンが中心でしたが、副作用が強く、治療完遂が困難な症例も多くありました。
2014年以降、DAA(直接作用型抗ウイルス薬)によるIFNフリー治療が登場し、経口薬のみでの治療が主流となりました。
現在よく使用されるIFNフリー治療レジメン(日本肝臓学会C型肝炎ガイドライン準拠):
- グレカプレビル+ピブレンタスビル(マヴィレット®)
- ソホスブビル+レジパスビル(ハーボニー®)
- ソホスブビル+ベルパタスビル(エプクルーサ®)
これらのDAA治療は、遺伝子型や治療歴にもよりますが、SVR(持続的ウイルス陰性化率)が概ね98〜ほぼ100%と非常に高く、 高齢者やIFN治療不成功例でも良好な成績が報告されています。
治療後のフォロー
医療費助成・専門医の役割
C型肝炎のDAA治療薬は非常に高価なものが多く、国や都道府県の医療費助成制度の利用が重要です。
多くの自治体では、インターフェロン治療およびIFNフリー治療に対する助成制度があり、申請には専門医による診断書が必要となるケースがあります。
大阪府のように、IFNフリー治療に係る助成診断書は日本肝臓学会肝臓専門医のみが作成可能と定めている自治体もあり、肝炎専門医療機関である当院にご相談下さい。