消化器内科で扱う症候と疾患 | ごとう内科・消化器内科 - 東淀川区東淡路にある内科・消化器内科・内視鏡内科・肝臓内科

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消化器内科で扱う症候と疾患

消化器内科で扱う症候と疾患

消化器疾患

●胃食道逆流症(逆流性食道炎):GERD

食後または空腹時、夜間の胸やけ、酸っぱいものがあがる、苦いものが上がるなどの症状(呑酸症状)がある場合に考えます。ものが飲み込みにくい、飲み込むときに胸につかえる、のどに違和感やつかえ感を感じる場合もあります。胃の入り口がゆるく胃酸が食道に逆流すること(食道裂孔ヘルニア)、胃酸過多や食べ過ぎ・飲み過ぎなどが原因です。強い逆流性食道炎を放置すると酸逆流による食道がん(バレット腺癌)のリスクが増加します。診断にはまず内視鏡検査を行い下部食道のびらん、潰瘍といった粘膜傷害の有無を確認します(同様の症状は食道癌や好酸球性食道炎、アカラシアなど他の重要な疾患で起こる場合もあり、粘膜生検などの検査を含め内視鏡検査は非常に重要です)。治療は生活習慣の改善(アルコール・香辛料などの刺激物や高脂肪食の制限、就寝時に上半身を10~15㎝高くする、前かがみで坐る姿勢を長く続けない、腹部・腰部を強く締め付けないなど)、薬物療法(胃酸分泌を抑制する薬や食道・胃の動きを改善する薬)が有効です。難治性の場合(高度の食道裂孔ヘルニアなど)は外科的治療を行う場合もあります。

●食道癌

食道癌は、日本の90%以上を占める扁平上皮癌では喫煙とアルコール摂取が危険因子とされています。またアルコールを飲むとすぐ赤くなる、いわゆるアルコール・フラッシャーの方ではさらにリスクが増大します。食道癌はリスク要因が共通の咽頭癌や口腔癌、喉頭癌と合併する可能性が高いことが知られています。近年欧米で急増している腺癌は食道-胃接合部に多く胃食道逆流症(GERD)が危険因子です。生活習慣・食生活の欧米化により今後わが国でも腺癌の増加が予想されています。早期癌は全く無症状です。進行するとのどや胸がしみる感じや、食物がつかえる感じが出ることがあります。声のかすれや「むせ」も進行癌の症状です。さらに進行すれば食事が全く通過しなくなります。初期の食道癌を見つけるためには内視鏡検査は極めて有用であり、色素内視鏡(ルゴール)や最近開発された画像強調内視鏡(IEE:Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡を用いれば2~3mm大の食道癌が診断可能な場合も出てきました。食道癌の標準的な治療には内視鏡治療、外科的手術、放射線化学療法(放射線療法+抗癌剤治療)がありますが、癌が粘膜の浅い部分に留まっている場合には内視鏡治療で治療することができますので早期発見が重要です。

当院院長は表在型食道癌の内視鏡治療(ESD;内視鏡的粘膜下層剥離術)を得意としており、非常勤として済生会千里病院でESDの指導を行っております。当院院長指導による済生会千里病院での治療も可能です。

●食道静脈瘤

食道静脈瘤は肝硬変の合併症の一つであり、内視鏡検査による定期的な経過観察と適切な治療が必要です。形態が大きいほど、発赤所見が高度なほど出血の危険性は高まります。肝障害の進展は食道静脈瘤の発達に関与し、腹水の貯留は静脈瘤血流を増大させ出血の誘因となります。静脈瘤破裂の予防として内視鏡的硬化療法(EIS)、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)が行われます。

●胃炎(急性胃炎、慢性胃炎)

急性胃炎では突発する上腹部痛、嘔気・嘔吐、腹部膨満などの症状が起こります。痛み止め(非ステロイド性消炎鎮痛剤:NSAIDs)を代表とする薬物、アルコールなどの食事によるもの、生鮮魚類を原因とするアニサキス症、ストレスが原因と考えられています。診断は内視鏡検査で行い、広範囲あるいは多発性に発赤、びらん、浮腫、出血などが見られます。治療は、誘因の除去が可能なものは行い、薬物治療(胃酸分泌を抑える薬、胃粘膜を保護する薬、胃の動きを抑える薬)を行います。アニサキスは、寄生虫の仲間で多くは魚介類の内臓部分に寄生しています。半透明白色で体長2~3cmの細長い形をしています。ヒトには主にサバ、サケ、アジ、イカ、タラなどの魚介類から感染し、アニサキス症という激しい腹痛(特に食後数時間のうちに始まる激しい腹痛と嘔吐)を起こすことがあります。内視鏡検査で虫体が確認されれば鉗子で除去することで劇的に症状は改善されます。なるべく迅速に内視鏡検査を行う方針としておりますので、心当たりのある場合は食事をせずに受診して下さい。
慢性胃炎の多くはピロリ菌(Helicobacter pylori)感染によります。初期感染は急性胃炎として発症するものの(幼少期に感染するとされており自覚のないことがほとんどです)その後感染が持続し、加齢とともに粘膜の萎縮(荒れること)が進行します。無症状のことが多いものの心窩部痛や胃もたれなどの症状があることもあり、ピロリ菌を除菌することで症状が改善する場合もあります。慢性胃炎そのものは予後の悪い疾患ではありませんが、慢性胃炎の原因となるピロリ菌を基盤に胃潰瘍や胃癌が発生すると考えられておりピロリ菌が陽性の場合は積極的に除菌治療を行うべきです。当院ではピロリ菌診断に用いる赤外分光分析装置を備え迅速な診断が可能です。当院医師は日本ヘリコバクター学会の認定するピロリ菌感染症認定医であり、ピロリ菌について心配な方はご相談下さい。

●ピロリ菌感染症

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ;Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌です。胃には強い酸(胃酸)があるため昔から細菌はいないと考えられていましたが、その発見以来さまざまな研究からピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの胃の病気に深く関っていることが明らかにされてきました。子供の頃(0~4歳頃)に感染し、一度感染すると多くの場合除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。ピロリ菌に感染すると炎症が続きますが、この時点では症状のない人がほとんどです。感染が長く続くと、胃粘膜の感染部位は広がっていき最終的には胃粘膜全体に広がり慢性胃炎となります。この慢性胃炎をヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と呼びます。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎を引き起こし、その一部が胃癌に進行していきます。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、除菌が成功すると改善します(健康保険で除菌療法を受ける方は必ず内視鏡検査を受けてください)。日本人のピロリ菌感染者の数は約3,500万人といわれていますが多くのピロリ菌感染者は自覚症状がないまま暮らしています。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌に関連する疾患の治療および予防のためピロリ菌感染者のすべてに除菌療法を受けることが強く勧められています。保険適用で除菌療法の対象となる人は、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎、胃潰瘍または十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後の方です(該当するかは受診時にご相談ください)。健康保険を用いた除菌治療は2回まで受けることができます(3回目;3次除菌や抗生剤;特にペニシリンに対するアレルギーのある方は自費にて受けることは可能です。当院院長、副院長は日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染症認定医です。)ピロリ菌の除菌療法が成功すると、ピロリ菌が関係している様々な病気のリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。除菌後もきちんと定期的な検査を続けてください。

●機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは内視鏡検査や他の検査でディスペプシア症状(胃が痛い、胃がもたれるといった上腹部を中心とする不快な感覚)の原因が見つからない疾患(自覚症状をもとに診断、治療、経過観察する疾患)です。一般成人や健診でのアンケート調査では約6.5~20%程度とされ、日常生活に影響を及ぼし、健康関連QOL(quality of life;生活の質)を低下させることが大きな問題となります。さまざまな要因が関与されるとされ精神心理的因子も関わりますが、胃運動機能異常と内臓知覚過敏が病態のうえで大きな要因として注目されています。病態がかなり複雑で心理社会的因子の影響も大きいために、治療に難渋する疾患ですが2013年に新たな治療薬(アコチアミド)も登場し良好な効果をあげていますので一度ご相談下さい。

●胃・十二指腸潰瘍

最初は主に空腹時や夜間にみぞおちに鈍い重苦しい痛みが出ることが多いですが、時に胃潰瘍では食後や食事と無関係に痛みが出ることもあります。痛みの部位は心窩部(みぞおち)ですが、右季肋部のこともあります。潰瘍から出血するとコーヒー色の吐物(コーヒー様残渣)を吐いたり、イカ墨のような真っ黒の便が出たりします。出血量が多いと立ち眩みやフラフラするなどの症状が出ます。ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染と非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs;痛み止めとしてよく処方されます)が二大要因とされています。我が国の潰瘍患者の90%以上がピロリ菌に感染していると言われ、ピロリ菌の除菌により潰瘍の再発が劇的に抑制できる事がわかっています。近年は薬物療法の発達により、ほとんどの胃潰瘍・十二指腸潰瘍はプロトンポンプ阻害剤という制酸剤とピロリ菌の除菌により治療可能となってきました。潰瘍から出血している場合もほとんどが内視鏡を用いて止血する事が可能です。現在では良性の胃・十二指腸潰瘍で手術が必要な事はまれですが、穿孔(胃に穴があくこと)や内視鏡を用いて止血が困難な場合には緊急血管造影による止血術や、手術の対象となることがあります。

●胃良性腫瘍(胃ポリープ、胃腺腫)

胃ポリープとは胃粘膜が内側に盛り上がり内腔に突出した隆起であり、通常は良性とされます(一般的には大腸ポリープと比較して癌化することは少ないとされ、切除の必要性は高くありませんが腺腫は癌との鑑別が困難なことが少なくなく内視鏡治療の適応とされます)。ほとんどは過形成性ポリープ、胃底腺ポリープ、腺腫性ポリープ(単に腺腫ともいいます)のいずれかです。過形成性ポリープはピロリ菌陽性の萎縮胃粘膜を持つことが多く、大きなものでは出血の原因になったり癌化することも報告されています。大きなもの(特に2cm以上)は内視鏡的な切除が勧められることもあります。胃底腺ポリープはピロリ菌陰性のきれいな胃粘膜にできることが多く、周囲粘膜と色調が同一の半球状の小ポリープが多発することが特徴です。臨床的には問題となりません。腺腫は前癌病変とされ、最近開発された画像強調内視鏡(IEE;Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡を用いることで腺腫と胃癌の鑑別も含めて精度の高い診断を行うことが可能となっています。胃腺腫と診断された場合は、定期的な内視鏡検査と胃癌との鑑別が困難な病変に対する積極的な内視鏡治療(内視鏡的粘膜切除術;EMR 内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)が重要です。

●胃癌

かつては我が国では罹患率・死亡率とも全悪性腫瘍中第1位でした。近年ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染率の低下に伴い罹患率は減少傾向にあるものの、いまだに男性で第1位、女性で第3位です。死亡率は低下傾向にありますが、男性で肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌、肺癌に次いで第3位と死亡率が高く、全体の死亡率が低下傾向にあるものの高齢者における罹患率はむしろ上昇しており早期発見、治療が望まれます。早期癌では症状はほとんどありません。進行癌では胃が重い、食物がつかえるなどの症状が出ることがあります。癌からの出血による黒色便や、貧血が進行して動悸・息切れなどで発見されることもあります。さらに進行すれば食事の通過障害による嘔吐や、全身倦怠感・体重減少などの症状が現れます。胃癌は内視鏡検査や胃レントゲン(バリウム)検査で診断されることがほとんどです。特に内視鏡検査はその存在診断だけでなく生検による病理診断や、画像強調内視鏡(IEE:Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡による範囲診断、超音波内視鏡による深達度診断も可能で、ほとんどの場合診断の決め手になります。さらに全身への広がり・転移を調べる検査として、腹部超音波、CT、MRIなどを用います。胃癌の治療は、病期・部位・組織にもとづいて治療法が細かく決められており、病期の軽いものから内視鏡治療(ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術 EMR;内視鏡的粘膜切除術)、外科的手術(腹腔鏡下手術を含む)、化学療法(抗がん剤治療)を行います。ピロリ菌感染と慢性萎縮性胃炎の合併は胃癌の高危険群である事がわかっており、積極的な除菌治療の対象となっています(除菌成功するとその後の胃癌発生のリスクが1/3程度に低下するとされますが、除菌後も定期的(萎縮が明らかな場合は概ね1年毎)な内視鏡検査が勧められます)。

当院院長は早期胃癌、胃腺腫の内視鏡治療(ESD;内視鏡的粘膜下層剥離術)を得意としており、非常勤として済生会千里病院でESDの指導を行っております。当院院長指導による済生会千里病院での治療も可能です。

●小腸疾患(原因不明の消化管出血:OGIB)

上部消化管内視鏡及び大腸内視鏡で出血を認めない原因不明の消化管出血に対してカプセル内視鏡での検査が可能です(カプセルは取り寄せが必要なため実施日の調整が必要です)。カプセル内視鏡で病変が疑われる場合、バルーン内視鏡などによる精査の可能な施設を紹介いたします。

●大腸ポリープ

大腸粘膜に隆起する組織を大腸ポリープといいます。ポリープは、直腸とS状結腸に高い確率で発生し、大きさは数ミリから3センチ程度まであります。小さなポリープではほとんど症状がありませんが、大きくなってくると便潜血や鮮血便という症状がでます。大きなポリープでは腸重積を起こしたり肛門外に出てしまうこともあります。大きく腫瘍性、非腫瘍性に分けられます。非腫瘍性の中には、過誤腫性、炎症性、過形成性ポリープがあります。腫瘍性は腺腫(せんしゅ)、癌があります。最も多いのが腺腫で、数年かけて進行しその一部が癌化します。このため腺腫は内視鏡的摘除の適応とされ、6mm以上の腺腫はポリペクトミーやEMR(内視鏡的粘膜切除術)が行われます。5mm以下の腺腫については経過観察が容認されますが、クリーンコロン(全大腸内視鏡検査にて、内視鏡的に腫瘍性病変を認めない状態)を目指し生検切除を行うという考え方も広がってきています(内視鏡的に非腫瘍性病変であることが明らかな場合は生検による確認は必要ありません)。腫瘍性、非腫瘍性ポリープの鑑別には画像強調内視鏡(IEE;Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡による観察が有用です。当院ではなるべくクリーンコロンを目指し、画像強調内視鏡及び拡大内視鏡により腫瘍性ポリープと判断したものについては日帰り手術でのポリペクトミーやEMRを施行しております。
大腸腺腫摘除後の経過観察は、クリーンコロン達成までは1年おきに、クリーンコロン達成後は3年に1回の全大腸内視鏡検査による経過観察を行うのが効率的という報告があります(大腸ポリープ診療ガイドライン2014)。また、内視鏡を肛門より挿入することのないカプセル大腸内視鏡が実施できる施設は大阪でもまだ多くはありませんが、当院では検査が可能です(保険診療でカプセル大腸内視鏡検査を施行するのには条件がありますので、詳しくはお問い合わせ下さい)。

●大腸癌

大腸癌の死亡数は女性では第1位,男性では肺癌,胃癌についで第3位となっています。大腸癌死亡数では半世紀でおよそ8倍になりました。この理由として、日本人の食生活の欧米化が一因と考えられています。大腸癌の罹患数は女性では乳癌についで第2位、男性では胃癌,肺癌についで第3位です。大腸癌罹患率(大腸癌の新規発生率)を年齢別にみても、大腸癌は男女とも中高年に増加しています。初期には何の症状もありません。進行癌では血便、便が細くなる、残便感、下痢と便秘を繰り返すなど排便に関する症状が出ます。貧血症状が現れてはじめて気がつくこともあります。更に進行すると腸の内腔が狭くなり腹痛や腹鳴、腹部膨満感を起こすことがあります。無症状で便潜血反応が陽性になったり、腫瘍マーカーの上昇による精密検査で発見されることもあります。大腸がんには遺伝性素因が影響することが知られています。親兄弟などに大腸癌、大腸ポリープがある方は積極的に検診を受けて下さい。また、生活習慣に関わる大腸がんのリスク要因として、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられています。大腸癌と診断された場合、病気の状態(進行度、ステージ)を把握するために、血液検査や内視鏡検査、画像検査(CT、MRIなど)が必要です。進行度、年齢、全身の状態などを総合的に判断して治療方針を決定します。内視鏡治療、手術、化学療法(抗癌剤治療)が標準的な治療法です。

当院院長は早期大腸癌や側方発育型大腸腺腫(LST)の内視鏡治療(ESD;内視鏡的粘膜下層剥離術)を得意としており、非常勤として済生会千里病院でESDの指導を行っております。当院院長指導による済生会千里病院での治療も可能です。

●腹部膨満

腹部膨満は、消化器の日常診療においてよく見られる症候の一つです。結果として心因性の場合も多く見られますがまずは器質的疾患を念頭におき、その際に病因の所在を管腔臓器、実質臓器、腹腔内に大別します。管腔臓器の疾患を疑う場合には腹部レントゲンを行います。腸管ガスや便塊の量・分布を確認することで腸閉塞、消化管運動障害、便秘の診断を行うことができます。実質臓器や腹腔内の異常を疑う場合には腹部超音波検査が有用です。腹水の有無や肝脾腫や腫瘍、急性膵炎での膵腫大や周囲の腹水の有無を調べることができます。必要に応じ内視鏡検査を追加していきます。

●便通異常(下痢、便秘)

下痢の診断を進める上では急性(2週間以内)か慢性(4週間以上)かの判断が重要です。急性下痢の90%以上は感染によるといわれています。食事内容の問診に加え、迅速診断キット、便培養、生検(内視鏡検査での)などを適宜行います。慢性下痢の原因は多様であり、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、吸収不良症候群、腸管慢性感染症、大腸腫瘍などが挙げられます。内視鏡検査、腹部超音波検査、消化管造影、腹部CT、血液検査などで器質的疾患を鑑別し、否定された場合には機能性障害である過敏性腸症候群を考えます。
便秘は国民の約30%が罹患している頻度の高い疾患であるにも関わらず、正しい病態理解に基づいた適切な治療が行われていないことが多くみられます。機能性便秘は大きく結腸通過時間正常型、遅延型、便排泄障害型に分類されます。過半数は結腸通過時間正常型で、便秘症状はあるが結腸通過時間は正常な場合を指し食物繊維で便を軟化・膨化させることで良好な反応を示すことが多いとされます。結腸通過時間遅延型は、腸蠕動運動の低下により通過時間の遅延を認める便秘です。通常便意は直腸内に便塊が貯留した段階で生じるため便塊がなかなか輸送されないこのタイプでは便意が消失することが多く見られ、食物繊維の摂取により停滞していた便の容積がさらに増大し症状が悪化する場合があり注意が必要です。便排泄障害型は直腸内の便塊の排出障害であり、浣腸の乱用などで直腸肛門反射が減弱されると便が肛門内に充填されているにも関わらず内肛門括約筋が弛緩されずに排便困難となります。

●過敏性腸症候群

通常の臨床検査(大腸内視鏡、血液検査、CTなど)で明らかな異常が認められないにも関わらず、腹痛や腹部の不快感を伴って、便通異常(便秘や下痢)が長く続く疾患です。我が国における有病率は人口の14.2%、内科外来患者の31%占めるほど頻度の高い病気です。便通の状態により、便秘型、下痢型、交代型の3つに分類されますが、男性では下痢型、女性では便秘型が目立ちます。過敏性腸症候群では、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常の3つが認められます。ただ、これらの異常を引き起こす真の原因はわかっていません。一部の患者さんでは感染性腸炎の後に発症することが明らかになっており、何らかの免疫異常が関わっている可能性も指摘されています。ストレスは、症状を悪化させる要因となります。自覚症状からの診断基準としてRome III基準があり、これに基づいて診断されますが、大腸癌をはじめとする消化器の癌ならびに炎症性腸疾患といった器質的異常を除外することが重要であり、大腸内視鏡などの検査が重要です。治療は生活習慣を評価し、過敏性腸症候群の増悪因子(偏食、食事量のアンバランス、夜食、睡眠不足、心理社会的ストレス)があれば改善を促します。消化管を標的とした薬物療法、プロバイオティクスが有効とされますが、無効な場合は抗不安薬、抗うつ薬の使用を検討します。

●虚血性大腸炎、大腸憩室炎

虚血性腸炎は大腸の急な血流障害が起きた後、血流が再開するのに伴って発生する臓器傷害によって起こります。大半は突発する腹痛とそれに引き続き数時間のうちに発症する下痢、血便という特徴的な経過をとります(例外もあります)。好発部位は左側結腸(下行結腸、S状結腸)で直腸や上行結腸はまれとされています。血流傷害を起こす機序としては、便秘、いきみ、強い下剤や浣腸の使用、感染性腸炎などがあげられます。保存的治療としては食事制限、補液が主であり、炎症所見や腹痛が強い場合は抗菌剤の使用も検討されます。大半を占める軽症例で経口摂取可能な場合には入院は不要ですが、症状が強い場合は入院加療目的に適切な施設を紹介します。
大腸憩室とは大腸の粘膜の弱い部分が外側に突出するもので、腸管運動異常による腸管内圧の亢進や腸管壁の脆弱性が関係すると言われ加齢に伴い発生率は上昇します。憩室の存在だけでは無症状のことが多いのですが感染による炎症を起こすと腹痛や発熱を伴ってきます。急性虫垂炎や感染性腸炎、尿路感染症、婦人科疾患との鑑別が重要となります。穿孔(腸に穴が空くこと)、膿瘍(膿を作ること)などの合併症を伴わない場合は保存的に腸管安静(食事制限)、抗菌剤の投与を行います。高熱や腹膜炎を疑う症状がない場合(歩いた時に響いたりしない、おなかを押さえて離した時に痛みが増強しない)は通院による内服治療が可能ですが、症状が強い場合は入院加療目的に適切な施設を紹介します。

●炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)には、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)とクローン病 (Crohn's disease: CD)があり、いずれも再燃と緩解を繰り返す下痢、血便や腹痛を伴った難治性の慢性炎症疾患で国の難病(特定疾患)に指定されています。潰瘍性大腸炎は大腸で発症し、クローン病は消化管全域において発症します。本症の原因は不明ですが、遺伝子的な素因によって、通常の腸内細菌に対して異常な免疫応答を示すことが病態発症につながることが推定されています。症状や貧血などの血液検査異常から炎症性腸疾患が疑われ、画像検査にて特徴的な所見が認められた場合に診断されます。画像検査としては主に大腸内視鏡検査やクローン病では小腸造影、小腸内視鏡、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)などが行われます。内視鏡検査や手術の際に同時に採取される検体の病理検査の所見や、肛門病変の所見などが診断に有用な場合もあります。治療法には、生活指導、食事療法、アミノサリチル酸製剤やステロイド剤、免疫抑制剤などの薬物療法が挙げられます。また、これらの治療が無効であった場合には、抗TNFα受容体拮抗薬(レミケードやヒュミラ)が使用されます。薬物治療ではありませんが、血球成分除去療法が行われることもあります。多くの場合内科治療で症状が改善しますが、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要となります。なお、潰瘍性大腸炎、クローン病は厚生労働省より指定難病とされていますが、当院院長は大阪府より難病指定医に認定されています。

肝胆膵疾患

●ウイルス性肝炎(B型、C型)

現在、我が国のB型肝炎ウイルス(HBV)感染者は110万~140万人いるとされていますが、その多くは母子感染防止策がとられる以前の母子感染によるものです。母親がHBVに感染していると、出産時に産道において血液を介して赤ちゃんに感染することがあります。 乳幼児は免疫機能が未熟なため、HBVに感染してもウイルスを異物と認識することが難しく、また認識できても排除する能力が弱いためウイルスは肝細胞に棲みつき、感染した子供は無症候性キャリア(HBVに感染しても肝炎の症状が無く健康な人)となります。 思春期~30歳ごろになると免疫機能が発達し、ウイルスを体内から排除しようと肝細胞を攻撃し始めるため、肝炎を発症します。しかし、多くの方は肝炎の症状も軽く、肝障害が進行することは少ないのですが、HBV感染者の約10%の方が 慢性肝炎に移行します。また、HBV感染者の約1~2%の方が、 肝硬変、肝癌を発症します。 現在では母子感染防止策がとられており、新たな母子感染はほとんど起きていません。水平感染の原因として以前は、医療従事者の針刺し事故や予防接種での注射器の使いまわし、HBVに汚染された血液の輸血に伴う感染がありました。昭和23年から昭和63年までの間に受けた集団予防接種等(予防接種またはツベルクリン反応検査)の際に、注射器(注射針または注射筒)が連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方は最大で40万人以上とされています。これらの方に対する救済対象の方には給付金の支給制度があります。厚生労働省のホームページを参照して下さい。しかし、ワクチンの接種や医療環境の整備、献血された血液に対する適切な検査の結果、これらを原因としたHBVの感染は現在ではほとんど起きていません。 その他の原因に、性交渉、ピアスの穴あけや入れ墨などで器具を適切に消毒せず繰り返し使用した場合、注射器を共用し麻薬などを注射した場合などがあります。 中でも近年最も多いのが性交渉による感染であり不特定多数の方と性交渉を持つことはなるべく避け、他の性行為感染症の予防効果もあるコンドームを使用することが勧められます。なお、パートナーがHBVキャリアの場合、HBV未感染の方は、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)の接種により感染を予防することができます。B型慢性肝炎の場合は、ウイルスを体から排除することはほぼ不可能(HBVはDNAウイルスであり肝細胞内の遺伝子に組み込まれるため)で、治療の目的は肝硬変への進展や発癌を防ぐこととなります。 治療法は、抗ウイルス療法(核酸アナログ製剤や場合によりインターフェロン)や肝庇護療法があります。各都道府県では、B型肝炎治療(インターフェロン治療及び核酸アナログ製剤治療)にかかる医療費を助成していますので当院でご相談下さい。
現在我が国では、190万~230万人がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているとされています。高齢になるほど頻度は高く、2005年時点の60~69歳では1.18%にものぼっています。また、自分が感染しているかどうか知らないで社会に潜在しているHCVに感染している方の推計値は、約80万人と報告されています。感染経路の多くが母子感染によるB型肝炎ウイルスとは異なり、HCVでは母子感染は多くはありません。C型肝炎ウイルス(HCV)は血液を介して感染します。現在感染している方のほとんどは、過去の輸血や注射が原因です。かつてはHCVに汚染されていた血液製剤による感染もありました。
現在は、輸血や血液製剤にウイルスが混入した血液を使用しないことになっているため、これらが原因で感染することはほとんどありません。また、医療現場での注射針の使い回しも行われることはなく、最近ではピアスの穴あけや医療現場での針刺し事故などによる感染がみられます。HCVはB型肝炎ウイルスより感染力は弱く、性交渉や体液で感染することはほとんどありません。C型肝炎の治療には、インターフェロン(IFN)治療及びIFNフリー治療による抗ウイルス療法と、病態の進展を遅らせる肝庇護療法があります。ウイルスを排除するためには抗ウイルス療法が必要ですが、副作用や患者さんの状態で治療ができない場合には、肝庇護療法を行う場合があります。抗ウイルス療法は、これまでは注射薬のIFNを用いた治療が中心でしたが、2014年に登場した内服のみのIFNフリー治療によりこれまで治療を受けることができなかった方やIFN治療で効果がみられなかった方、IFNの副作用のため治療を続けることができなかった方にも有効な治療ができるようになりました。C型肝炎の新規治療薬は高価なものがほとんどですが、各都道府県ではC型肝炎治療(インターフェロン治療またはインターフェロンフリー治療)にかかる医療費を助成しています。大阪府ではインターフェロンフリー治療に係る助成金申請のための診断書は日本肝臓学会肝臓専門医しか作成することができません(都道府県により若干異なります)ので、当院でご相談下さい。

なお、当院は大阪府より肝炎専門医療機関の指定を受けています。

●自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎(Autoimmune hepatitis;AIH)は、中年の女性に多く発症する肝炎で、その成因についてはまだ不明ですが、肝細胞に存在する何らかの自己抗原に対する免疫反応が原因と考えられています。放置しておくと慢性の経過を辿り、ウイルス性肝炎と同様肝硬変へと進展するため早期に診断し治療することが重要です。AIHでは、血中ガンマグロブリンやIgG値の上昇や抗核抗体や抗平滑筋抗体、肝腎ミクロゾーム1抗体といった自己抗体の出現が特徴的です。診断には肝組織を採取し、病理の医師により顕微鏡で評価してもらう組織学的検索も重要で自己抗体陽性、血中ガンマグロブリンやIgG値の上昇等の項目と併せて、厚生省難治性肝疾患調査研究班の「自己免疫性肝炎診断指針」や国際自己免疫性肝炎グループによる診断基準に基づいて総合的に判断します。自己免疫性肝炎に対しては、他の自己免疫疾患と同様、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が通常用いられます。一部の症例では副腎皮質ステロイドを中止することも可能ですが、減量とともに肝機能が悪化し(再燃) 、副腎皮質ステロイドの投与を長く続けることが必要な場合もあります。副腎皮質ステロイドの効果が不十分で肝機能のコントロールがつかない場合、あるいは副作用で使用できない場合は最近ではウルソデオキシコール酸 (ウルソ)を軽症例の自己免疫性肝炎や副腎皮質ステロイド剤を減量、中止するために用いる試みもなされています。アザチオプリンや6-MPといった免疫抑制剤を使用します。なお、自己免疫性肝炎は厚生労働省より指定難病とされていますが、当院院長は大阪府より難病指定医に認定されています。

●原発性胆汁性胆管炎(原発性胆汁性肝硬変)

肝内胆管がリンパ球などの免疫担当細胞による慢性的な破壊により、その胆汁排泄機能を障害されるために胆汁うっ滞を生じ最終的に胆汁性肝硬変となる疾患です。発症の原因はまだ不明ですが、自己抗体の一つである抗ミトコンドリア抗体が特異的かつ高率に陽性化し、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群などの自己免疫性疾患や関節リウマチなどの膠原病を合併しやすいことから、自己免疫学的機序の関与が考えられています。「原発性胆汁性肝硬変」の疾患概念が提唱されたのは50年以上前であり、多くの症例は胆汁性肝硬変にまで進展してから診断されていました。このため当時はこの名称は抵抗なく受け入れられていましたが、抗ミトコンドリア抗体の測定など検査法の進歩によって肝硬変に進行する前に診断される症例が多くなり、またウルソデオキシコール酸(ウルソ)が第一選択薬として用いられるようになり多くの症例で、非肝硬変期から肝硬変への進展を防ぐことも可能になりました。実際、我が国では「原発性胆汁性肝硬変」の患者の70~80%が「無症候性」でその多くは肝硬変にまで進展していません。このため、現在多くの「原発性胆汁性肝硬変」症例は臨床的、病理学的にも肝硬変ではなく病名は疾患の病態、進展度を正確に反映しておらず、2016年以降「原発性胆汁性胆管炎」に病名が変更されます(指定難病の診断書などの文書には,当面は混乱を避けるため両病名が併記されますが、いずれ「原発性胆汁性胆管炎」に統一される見込みです)。なお、原発性胆汁性肝硬変は厚生労働省より指定難病とされていますが、当院院長は大阪府より難病指定医に認定されています。

●肝硬変

我が国には20~30万人の肝硬変患者がおり、成因としてはウイルス(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)起因性が最も多く、次いでアルコール性、そして最近では生活様式の欧米化に伴うメタボリックシンドロームに関連したNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)がその原因として注目されています。種々の原因によって生じた肝障害が慢性の経過をたどって進行した終末像とされ、黄疸・腹水・浮腫・肝性脳症・消化管出血などの症候のいずれもが認められない病態が代償性肝硬変、またこれらの症候のうち一つ以上認められる状態が非代償性肝硬変として分類されます。肝硬変を既存の保存的治療により元の正常な肝臓へと修復することは困難であり、現状をさらに悪化させないことが重要です。身体障害者手帳制度では2016年4月より肝臓機能障害の認定基準の見直しが行われ、認定対象が大幅に拡大されました。これにより必要な治療を適切に行う環境が整いQOL(生活の質)の改善や医療費負担の軽減が期待されます。当院院長は大阪市より身体障害者福祉法第15条第1項の肝臓機能障害指定医師に認定されています。

●アルコール性肝障害

長期(通常は5年以上)にわたる過剰の飲酒が肝障害の主な原因と考えられる病態で、禁酒により肝機能(血清AST、ALT及びγGTP値)が明らかに改善するのが特徴です。治療の基本は禁酒であり、その他の治療法は補助的です。正確な飲酒量がわからない場合や1ヶ月以上禁酒しても改善のない場合は、血液検査や肝組織を採取し病理の医師により顕微鏡で評価してもらう組織学的検索により他の肝疾患(ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、非アルコール性脂肪性肝炎)を鑑別する必要があります。アルコール依存症者が飲みたいと思う気持ちの背景には、身体的な変容によりイライラや易怒性を均衡させるために衝動性に駆られての「飲酒欲求」と精神的に依存した「飲酒願望」があります。従来の抗酒薬(大酒飲みを下戸に変える薬剤でアルコール分解酵素を阻害することで吐き気、頭痛、動悸、冷汗を引き起こさせ、それらの不快な症状を起こすことで飲酒をそれ以上続けられなくする)に加え、2013年に断酒補助薬(アカンプロサート)が承認されましたが、身体依存から生じる「飲酒欲求」しか抑えることはできません。ただし、アルコール依存症者にはやはり「飲みたい」という気持ちがあり、その日1日飲まないということを積み重ねていくことしかなく、自助グループへの参加が最良です。アルコール依存症については精神科やアルコール専門クリニックでの治療をお願いしております。

●脂肪肝、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)

脂肪肝、脂肪性肝炎の自覚症状はほとんどなく検診や他の疾患で受診した際に腹部超音波検査や血液検査の異常で偶然発見される例がほとんどです。血液検査で異常がないこともあります。肝臓に過剰に脂肪が沈着した状態を脂肪肝と言います。脂肪肝にはアルコールが原因のアルコール性脂肪肝と、肥満や糖尿病、過食などによる非アルコール性脂肪肝があります。アルコールが原因の脂肪肝はやがて悪化して肝硬変になりますが、アルコール摂取が殆どないにもかかわらず脂肪肝から肝炎、肝硬変に進行するものを非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼んでいます。脂肪肝の治療には食事制限や定期的に運動をするなど日常生活を改善することが重要です。NASHでは長い年月をかけて肝硬変へと進行し、肝癌を発症することもあり、治療を継続しながら定期的に医療機関を受診し、経過をみていくことが大切です。
NASHにおいて現在確立した薬物治療法はなく食事カロリー制限や定期的な運動など日常生活の改善が重要です。体重減少が有効とされています。また糖尿病や高血圧などに対してきちんと薬物療法を行うことも重要です。

●肝嚢胞

健診の超音波検査で診断されることが多く、5~20%に発見されるとされます。大きさは数mm程度のものから20cmを超えるものまで様々です。診断は超音波検査が有用で通常は他の検査は不要ですが、嚢胞内に出血すると(大きなもので起こります)内部に充実性腫瘍様に見えるため造影検査(CT、MRI)が必要になることもあります。悪性化することはまれであり、症状のないものは経過観察で構いません。嚢胞が大きく、嚢胞による自覚症状(圧迫症状;仰向けに寝ると上から圧迫されて眠れないなど)あるいは嚢胞内感染(発熱、腹痛など)や出血などの合併症がある場合には治療(超音波ガイド下に嚢胞を穿刺し内容物を吸引、硬化剤(無水エタノールやミノマイシンといった抗生剤)を注入したり外科手術(開窓術、部分肝切除術))の対象となります。

●肝良性腫瘍

健診でよく見られる肝血管腫が最多です。肝臓は血液の豊富な臓器であり、毛細血管が集まり血豆状になるものです。加齢により増加することはよく見られます。超音波検査では境界明瞭な高エコー(白っぽく見える)が典型例ですが、サイズが大きなものは肝細胞癌と鑑別が難しいことも多く造影CTや造影超音波検査が有効です。 限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia;FNH)は健診などで肝腫瘍として発見され造影CTでも肝細胞癌と同じような造影パターンを示しますが、造影超音波検査や造影MRI(EOB-MRI)で診断が可能です。

●肝細胞癌、肝内胆管癌

肝臓原発の肝癌は、大きく肝細胞癌と胆管細胞癌に分けられますが、90%以上は肝細胞癌です。B型肝炎やC型肝炎などのウィルス性肝炎、アルコール性肝障害、肝硬変などを母体としています。最近では脂肪肝(NASH)からも発癌することが分かってきました。超音波検査やCT検査などが必要です。慢性肝炎では半年に1回、肝硬変では3ヶ月に1回の検査が好ましいと考えられています。また造影MRI(EOB-MRI)では小さい肝癌が検出できるようになってきました。また血液検査で肝機能などを調べる他、腫瘍マーカーを調べます。肝細胞の障害の程度、がんの進行度により、次のような治療法を選択します。1)手術 肝臓の予備能が良い場合に切除手術を行います。肝内胆管癌では手術が原則です。2)局所療法(ラジオ波熱凝固療法、エタノール局注療法など) 肝細胞癌に行われ、最近ではラジオ波熱凝固療法が主流です。 ※ラジオ波熱凝固療法(RFA):超音波で腫瘍を同定し、局所麻酔下に特殊な針を皮膚から刺し、熱を発生させて肝癌を熱凝固させます。※エタノール局注療法(PEI):超音波で腫瘍を同定し、針を指してそこからアルコール(エタノール)を注入し、肝癌を凝固壊死させます。3)肝動脈塞栓術・抗癌剤動注療法:太ももの付け根にある大腿動脈を穿刺しカテーテルを挿入します。カテーテルが肝動脈まで到達すれば、そこから抗癌剤やゼラチンスポンジなどを注入し、癌を養う血管を詰めてしまいます。肝臓は門脈と呼ばれる血管で栄養されるために、肝動脈は詰めても肝機能に影響は少ないとされています。進行した肝癌ではカテーテルの先端を肝臓の血管に留置したまま、体表に埋めた特殊な装置から繰り返し抗癌剤を注入する持続動注療法が行われます。4)抗癌剤治療:肝細胞癌に対しては分子標的治療薬(ソラフェニブ)、肝内胆管癌にはゲムシタビン、シスプラチン併用療法が用いられます。

●胆石症、胆嚢炎、急性胆管炎、総胆管結石症

胆石は胆汁を元に胆道内につくられた結石で場所により胆嚢結石と胆管結石、主な構成成分からコレステロール結石とビリルビン(+カルシウム)結石に分類されます。この病気は食生活が欧米に近くなったことや高齢化などで増加傾向にあり、女性に多いとされます。胆石発作といって結石が胆嚢頚部にはまり込んだ場合に起きる症状が特徴です。食後や夜間に突然生じるみぞおち、右脇腹、右背部の激痛で右肩や胸部、背部に抜けていくことがあり、数十分~数時間後には消失するのが典型的です。脂肪の多い食事がきっかけとなります。血液検査で肝機能異常や炎症の合併の有無を調べます。画像検査としては腹部超音波が有効で、緊急手術や胆道ドレナージ術の適応を検討するためにCT、MRI(膵管および胆管を描出するMRCP)、内視鏡検査(膵管および胆管を直接造影するERCP)で結石の大きさや位置を確認します。結石で無症状の場合は、多くは何も起こらないので溶解療法(ウルソ)を行ったり経過観察とすることがあります。症状がある場合は緊急処置が必要となることも多く、血液検査、超音波検査を至急で行い緊急処置の適応を判断し、処置が可能な施設への紹介を行います。

●胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋腫症

胆嚢内に突出する隆起をポリープといいます。非腫瘍性のものにコレステロールポリープ、炎症性ポリープ、過形成性ポリープ、胆嚢腺筋腫症があり、腫瘍性のものには腺腫、癌があります。健診の腹部超音波検査で発見される胆嚢ポリープの頻度は8%前後と報告されており、よくみられる疾患です。40~50歳代に多く性差はないとされます。胆嚢ポリープの約90%がコレステロールポリープとされ良性であり治療は不要ですが、大きさが10mm以上のもの、広基性(根元が太い)のもの、内部エコーが低エコーを呈するもの、短期間のうちに増大傾向を有するものは腫瘍性(癌または腺腫)を考慮し、精査及び治療(胆嚢病変の診断は困難な場合もあり、完全生検としての意味を含め腹腔鏡下胆嚢摘出術)が望まれます。腹部超音波検査が有用で、大きさにより半年~1年毎に経過観察を行うことが勧められます。
胆嚢腺筋腫症は胆嚢壁が肥厚するもので、胆嚢壁の筋線維組織の肥厚、粘膜上皮の過形成が見られます。予後は良好で治療は不要ですが一部に胆嚢癌の合併する場合があり、半年~1年毎に経過観察を行うことが勧められます。

●胆嚢癌、胆管癌

我が国において胆嚢癌、胆管癌による死亡率は徐々に増加しつつあります。男性では胆管癌、女性では胆嚢癌が多いとされ60~70歳代が好発年齢です。早期の胆管癌、胆嚢癌では症状がないことが多いですが、進行した時の症状としては腹痛や腹部違和感、全身倦怠感などが見られます。腫瘍が胆管を閉塞して黄疸を来たすようであれば、皮膚のかゆみや灰色~白色の便、褐色尿が出現します。胆嚢癌の診断には腹部超音波や超音波内視鏡を用います。またCT、MRI、血管造影を行い病変の位置の他、肝への直接浸潤や遠隔臓器への転移、リンパ節転移、腹水の有無を確認します。切除可能と判断されれば腫瘍の進展様式にあわせて術式を決定します。根治を目指す治療法は手術のほかにはありませんが、切除不能の胆道癌や非治癒切除例・再発例に対しては抗癌剤治療が検討されます。現在保険適応となっている治療には、ゲムシタビン(ジェムザール)単独、S−1(TS−1)単独、そしてゲムシタビン、シスプラチン併用療法があり、このうちゲムシタビン、シスプラチン併用療法に関しては予後延長効果についてゲムシタビン単剤と比較した臨床試験にて、有意に予後を改善することが示されたため第一選択の標準治療として考えられています。しかし、抗癌剤治療では副作用が問題になることも少なくなく、症例ごとに年齢や臓器障害の有無、全身状態などを考慮して治療方針を決定します。

●急性膵炎

膵炎は食物の消化に必要な消化酵素を含んだ膵液を出す膵外分泌腺に様々な原因で炎症が起こる病気です。急性膵炎は飲酒後、胆石、手術・外傷後、内視鏡を使用した膵管造影検査の後、血液中の中性脂肪高値などが原因で急激に膵臓の炎症が起きることで生じます。脂肪分の多い食事やお酒を飲み過ぎた後などに急激な強いみぞおちの痛みを自覚した場合、急性膵炎の可能性を考えます。血液および尿検査でアミラーゼ値が高くなっていれば急性膵炎が強く疑われ、診断確定のために腹部CT検査などの画像検査を行います。急性膵炎は膵臓が腫れるだけの軽症の浮腫性膵炎から始まり、膵臓に出血の起こる出血性膵炎、さらに膵臓が部分的に壊死になる壊死性膵炎のような重症膵炎まで色々な段階があります。軽い膵炎の段階で速やかに治療を開始すれば多くの膵炎は治りますが、重症の膵炎になると治療が非常に難しく死に至ることも珍しくありません。急性膵炎と診断されれば原則入院加療が必要になりますので、速やかに診断を行い適切な治療のできる病院へ紹介を行います。

●慢性膵炎

慢性膵炎は、消化酵素を分泌する膵臓の外分泌腺細胞に長期間持続的に炎症が起こることで徐々にその細胞が壊され、壊れた細胞が線維組織に置き換わることで膵臓が硬くなり、膵臓本来の機能が失われてしまう病気です。原因としてはアルコールによるものがほとんどで、このほかに胆石によるものや副甲状腺機能亢進による高カルシウム血症、原因不明のものもあります。みぞおちや背部の痛みで始まり、この鈍い痛みが長期間にわたり断続的に続きます。初期には急性膵炎様の激しい腹痛を数ヶ月後毎に繰り返す方が多いのですが通常は7~8年ぐらい経過すると腹痛は徐々に軽くなります。これは膵臓の機能が完全に荒廃して炎症が軽減することによるもので、食欲低下、下痢、体重減少など膵臓の機能不全に伴う症状が認められます。慢性膵炎が長期にわたると膵臓の線維化が膵外分泌細胞のみならず、インスリン分泌障害をも引き起こして血糖の調節ができなくなり糖尿病を発症します。慢性膵炎の経過は、腹痛発作が繰り返し鈍い腹痛が持続する代償期と膵臓細胞が壊れて膵臓の機能が失われる非代償期に分けられ治療法が異なります。 代償期の治療は腹痛に対する治療が中心になり、慢性膵炎による痛みは膵臓の線維化により膵液の通り道である膵管が細くなり膵液の流れが悪くなることにより起こるため、膵管の出口を緩めるお薬を使って膵液の流れを良くする治療を行います。非代償期になると膵臓の機能そのものが失われるため膵臓から出る消化酵素が減少し、たんぱく質や脂肪の消化吸収不良がおこり下痢を起こします。この下痢に対する治療として、膵消化酵素剤(パンクレリパーゼ)の補充を行います。

●膵嚢胞、嚢胞性膵腫瘍

肝や腎に見られる嚢胞は一般的には良性とされます(極端に多発する場合や大きなもの、内部の性状が不均一なものなどを除き)。以前は膵臓に見られる嚢胞も同じように考えられていましたが、主膵管拡張と膵嚢胞が膵癌の危険因子の画像所見とされるようになり、画像診断の進歩、普及(腹部超音波検査、CT、MRI)により健診などで発見されることが増えてきています。多くは良性とされますが、嚢胞の大きさが3cmを超えるものや主膵管の拡張(5~9mm)が見られるものなどは悪性の可能性を考え膵液細胞診やEUS(超音波内視鏡)による精密検査が必要となります。

●膵癌

我が国の膵癌は近年増加傾向にあり、毎年3万人以上の方が膵癌で亡くなっています。死亡数はこの30年で8倍以上に増加しました。全国統計では肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がんについで死因の第5位でした。60歳代の方に多く、やや男性に多く発症します。喫煙、家族歴、糖尿病、慢性膵炎などとの関連が指摘されています。膵癌は早期の状態では自覚症状が少ないため、なかなか発見することができません。もう少し進行してから腹痛、体重減少、黄疸等で気づかれることが多い病気です。そのため診断されたときには進行した状態で見つかることが多いのです。また、背中が痛くなると膵癌を心配する方もおられますが、必ずしも特徴的な症状ではありません。糖尿病の方の血糖値コントロールが急に悪くなった時などは要注意です。診断には超音波検査、CT、MRI、内視鏡的膵管造影、血管造影などの検査が行われますが、膵癌は胃癌や大腸癌のように内視鏡検査にて腫瘍そのものを見ることができません。特に早期の膵癌ではCTや超音波検査だけではよくわからないことも多く予後不良の原因となっています。治療は進行度や状態により異なります。手術は最も根治的な治療法ですが、手術で取りきれる範囲を越えて膵癌が広がっている場合は放射線療法や化学療法の方が第一選択になります。

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