消化器内科で扱う消化管疾患の症候 | ごとう内科・消化器内科 - 東淀川区東淡路にある内科・消化器内科・内視鏡内科・肝臓内科

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  4. 消化管疾患の症候

消化管疾患の症候

●びらん性胃食道逆流症(逆流性食道炎):GERD

食後または空腹時、夜間の胸やけ、酸っぱいものがあがる、苦いものが上がるなどの症状(呑酸症状)がある場合に考えます。ものが飲み込みにくい、飲み込むときに胸につかえる、のどに違和感やつかえ感を感じる場合もあります。胃の入り口がゆるく胃酸が食道に逆流すること(食道裂孔ヘルニア)、胃酸過多や食べ過ぎ・飲み過ぎなどが原因です。強い逆流性食道炎を放置すると酸逆流による食道癌(バレット腺癌)のリスクが増加します。診断にはまず内視鏡検査を行い下部食道のびらん、潰瘍といった粘膜傷害の有無を確認します(同様の症状は食道癌や好酸球性食道炎、アカラシアなど他の重要な疾患で起こる場合もあり、粘膜生検などの検査を含め内視鏡検査は非常に重要です)。食道炎の程度の分類方法に改訂ロサンゼルス分類がありグレード N、M、A、B、C、Dの6段階に分かれています。グレードNは正常。Mは食道粘膜が白濁するだけの微小変化型、A(長径が5mmを越えない粘膜障害で粘膜ひだに限局されるもの)及びB(少なくとも1ヵ所の粘膜障害が5mm以上あり、それぞれ別の粘膜ひだ上に存在する粘膜障害が互いに連続していないもの)は軽症型、C(少なくとも1ヵ所の粘膜障害が2条以上のひだに連続して広がっているが、全周性でないもの)及びD(全周性の粘膜障害)は重症型食道炎と考えられています。

  • 【Grade M】

  • 【Grade A】

  • 【Grade B】

  • 【Grade C】

  • 【Grade D】

(総合臨床 47(5);919-923,1998)
 

治療は生活習慣の改善(アルコール・香辛料などの刺激物や高脂肪食の制限、就寝時に上半身を10~15㎝高くする、前かがみで坐る姿勢を長く続けない、腹部・腰部を強く締め付けないなど)、薬物療法(胃酸分泌を抑制する薬や食道・胃の動きを改善する薬)が有効です。難治性の場合(高度の食道裂孔ヘルニアなど)は外科的治療を行う場合もあります。
当院では内視鏡専門医による、精度の高い上部消化管内視鏡(胃カメラ)による逆流性食道炎診断・治療を行っております。

●食道癌

食道癌は、日本の90%以上を占める扁平上皮癌では喫煙とアルコール摂取が危険因子とされています。またアルコールを飲むとすぐ赤くなる、いわゆるアルコール・フラッシャーの方ではさらにリスクが増大します。食道癌はリスク要因が共通の咽頭癌や口腔癌、喉頭癌と合併する可能性が高いことが知られています。近年欧米で急増している腺癌は食道-胃接合部に多く胃食道逆流症(GERD)が危険因子です。生活習慣・食生活の欧米化により今後わが国でも腺癌の増加が予想されています。早期癌は全く無症状です。進行するとのどや胸がしみる感じや、食物がつかえる感じが出ることがあります。声のかすれや「むせ」も進行癌の症状です。さらに進行すれば食事が全く通過しなくなります。初期の食道癌を見つけるためには内視鏡検査は極めて有用であり、色素内視鏡(ルゴール)や最近開発された画像強調内視鏡(IEE:Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡を用いれば2~3mm大の食道癌が診断可能な場合も出てきました。食道癌の標準的な治療には内視鏡治療、外科的手術、放射線化学療法(放射線療法+抗癌剤治療)がありますが、癌が粘膜の浅い部分に留まっている場合には内視鏡治療で治療することができますので早期発見が重要です。

【表在型(早期)食道癌の例】

表在型(早期)食道癌をWLIで観察

左:WLI(通常光)での観察 平坦な病変のため一見不明瞭です

右:IEE(画像協調画像:BLI image)での観察 病変部分がbrownish area(周囲よりも茶色)で認識されます

表在型(早期)食道癌をIEEで観察

左:IEE併用拡大観察 病変部分の毛細血管が周囲よりも拡張、不整になっているのがわかります

右:色素(ルゴール)散布後 正常粘膜は黒く染色されますが病変の部分は染色されず、明るく(オレンジ色に)観察されます

当院院長は表在型食道癌の内視鏡治療(ESD;内視鏡的粘膜下層剥離術)を得意としており、非常勤として済生会千里病院でESDの指導を行っておりました(平成25~令和5年)ため手術適応にも精通しており適切な施設のご紹介が可能です。

【進行食道癌(1型:隆起型)の例】

進行食道癌(1型:隆起型)の症例

画面の左側に丈の高い隆起性病変を認めます
手術の必要な病変です

●食道静脈瘤

食道静脈瘤は肝硬変の合併症の一つであり、内視鏡検査による定期的な経過観察と適切な治療が必要です。形態が大きいほど、発赤所見が高度なほど出血の危険性は高まります。肝障害の進展は食道静脈瘤の発達に関与し、腹水の貯留は静脈瘤血流を増大させ出血の誘因となります。静脈瘤破裂の予防として内視鏡的硬化療法(EIS)、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)が行われます。

食道静脈瘤の症例

(食道静脈瘤の例:画面右上に拡張した血管(静脈瘤)を認めます)

●胃炎(急性胃炎、慢性胃炎)

急性胃炎では突発する上腹部痛、嘔気・嘔吐、腹部膨満などの症状が起こります。痛み止め(非ステロイド性消炎鎮痛剤:NSAIDs)を代表とする薬物、アルコールなどの食事によるもの、生鮮魚類を原因とするアニサキス症、ストレスが原因と考えられています。診断は内視鏡検査で行い、広範囲あるいは多発性に発赤、びらん、浮腫、出血などが見られます。治療は、誘因の除去が可能なものは行い、薬物治療(胃酸分泌を抑える薬、胃粘膜を保護する薬、胃の動きを抑える薬)を行います。アニサキスは、寄生虫の仲間で多くは魚介類の内臓部分に寄生しています。半透明白色で体長2~3cmの細長い形をしています。ヒトには主にサバ、サケ、アジ、イカ、タラなどの魚介類から感染し、アニサキス症という激しい腹痛(特に食後数時間のうちに始まる激しい腹痛と嘔吐)を起こすことがあります。内視鏡検査で虫体が確認されれば鉗子で除去することで劇的に症状は改善されます。なるべく迅速に内視鏡検査を行う方針としておりますので、心当たりのある場合は食事をせずに受診して下さい(検査枠の兼合いがあり、まずお電話下さい)。

【胃アニサキス症の例】

胃アニサキス症の例

左上:丸まったアニサキス虫体

右上:鉗子にて把持(胃粘膜に虫体の頭部が食い込んでおり、この後頭部を含めて摘出するため把持し直します)

左下:虫体摘出後

【NSAIDs(鎮痛剤)による急性胃粘膜病変】

NSAIDs(鎮痛剤)による急性胃粘膜病変

黒色の血餅の付着を伴うびらんが多発

慢性胃炎の多くはピロリ菌(Helicobacter pylori)感染によります。初期感染は急性胃炎として発症するものの(幼少期に感染するとされており自覚のないことがほとんどです)その後感染が持続し、加齢とともに粘膜の萎縮(荒れること)が進行します。無症状のことが多いものの、心窩部痛や胃もたれなどの症状があることもあり、ピロリ菌を除菌することで症状が改善する場合もあります。慢性胃炎そのものは予後の悪い疾患ではありませんが、慢性胃炎の原因となるピロリ菌を基盤に胃潰瘍や胃癌が発生すると考えられており、ピロリ菌が陽性の場合は積極的に除菌治療を行うべきです。当院ではピロリ菌診断に用いる赤外分光分析装置を備え迅速な診断が可能です。当院医師は日本ヘリコバクター学会の認定するピロリ菌感染症認定医であり、ピロリ菌について心配な方は是非ご相談下さい。

【H.pylori感染に伴う慢性胃炎(萎縮性胃炎)の例】

H.pylori感染に伴う慢性胃炎(萎縮性胃炎)の例

左上:萎縮(粘膜が薄くなり毛細血管が目立ちます)

右上:点状発赤

左下:粘膜襞肥厚、蛇行

右下:腸上皮化生(やや白色調に変化、前癌病変とされ注意の必要な状態です)

●ピロリ菌感染症

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ;Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌です。胃には強い酸(胃酸)があるため昔から細菌はいないと考えられていましたが、その発見以来さまざまな研究からピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの胃の病気に深く関っていることが明らかにされてきました。子供の頃(0~4歳頃)に感染し、一度感染すると多くの場合除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。ピロリ菌に感染すると炎症が続きますが、この時点では症状のない人がほとんどです。感染が長く続くと、胃粘膜の感染部位は広がっていき最終的には胃粘膜全体に広がり慢性胃炎となります。この慢性胃炎をヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と呼びます。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎を引き起こし、その一部が胃癌に進行していきます。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、除菌が成功すると改善します(健康保険で除菌療法を受ける方は必ず内視鏡検査を受けて下さい)。日本人のピロリ菌感染者の数は約3,500万人といわれていますが多くのピロリ菌感染者は自覚症状がないまま暮らしています。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌に関連する疾患の治療および予防のためピロリ菌感染者のすべてに除菌療法を受けることが強く勧められています。保険適用で除菌療法の対象となる人は、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎、胃潰瘍または十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後の方です(該当するかは受診時にご相談下さい)。健康保険を用いた除菌治療は2回まで受けることができます(3回目;3次除菌や抗生剤;特にペニシリンに対するアレルギーのある方は自費にて受けることが可能です。当院院長、副院長は日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染症認定医であり、当院では3次除菌が可能です。)ピロリ菌の除菌療法が成功すると、ピロリ菌が関係している様々な病気のリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。除菌後もきちんと定期的な内視鏡検査(胃炎の進行している方は概ね年1回程度)を続けて下さい。

【ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に特徴的な所見】

ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に特徴的な所見

左上:萎縮

右上:鳥肌胃炎(若年者に多い所見)

左中:粘膜襞肥大、蛇行 白濁粘液付着

右中:黄色腫

左下:点状発赤

右下:腸上皮化生

●機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは内視鏡検査や他の検査でディスペプシア症状(胃が痛い、胃がもたれるといった上腹部を中心とする不快な感覚)の原因が見つからない疾患(自覚症状をもとに診断、治療、経過観察する疾患)です。一般成人や健診でのアンケート調査では約6.5~20%程度とされ、日常生活に影響を及ぼし、健康関連QOL(quality of life;生活の質)を低下させることが大きな問題となります。さまざまな要因が関与されるとされ精神心理的因子も関わりますが、胃運動機能異常と内臓知覚過敏が病態のうえで大きな要因として注目されています。病態がかなり複雑で心理社会的因子の影響も大きいために、治療に難渋する疾患ですが2013年に新たな治療薬(アコチアミド:アコファイド®)も登場し良好な効果をあげていますので一度ご相談下さい。
なお、機能性消化器疾患診療ガイドライン2021機能性ディスペプシア(FD)にてFDの治療薬として推奨度:強とされたものに酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害剤、ヒスタミンH2受容体拮抗薬)、アコチアミド、六君子湯(漢方薬)があり、当院でも症状に合わせ使用しています。

●胃・十二指腸潰瘍

最初は主に空腹時や夜間にみぞおちに鈍い重苦しい痛みが出ることが多いですが、時に胃潰瘍では食後や食事と無関係に痛みが出ることもあります。痛みの部位は心窩部(みぞおち)ですが、右季肋部のこともあります。潰瘍から出血するとコーヒー色の吐物(コーヒー様残渣)を吐いたり、イカ墨のような真っ黒の便が出たりします。出血量が多いと立ち眩みやフラフラするなどの症状が出ます。ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染と非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs;痛み止めとしてよく処方されます)が二大要因とされています。我が国の潰瘍患者の90%以上がピロリ菌に感染していると言われ、ピロリ菌の除菌により潰瘍の再発が劇的に抑制できる事がわかっています。近年は薬物療法の発達により、ほとんどの胃潰瘍・十二指腸潰瘍はプロトンポンプ阻害剤という制酸剤とピロリ菌の除菌により治療可能となってきました。潰瘍から出血している場合もほとんどが内視鏡を用いて止血する事が可能です。現在では良性の胃・十二指腸潰瘍で手術が必要な事はまれですが、穿孔(胃に穴があくこと)や内視鏡を用いて止血が困難な場合には緊急血管造影による止血術や、手術の対象となることがあります。

左:胃潰瘍(胃角小弯)の内視鏡像 右:十二指腸潰瘍(球部前壁)の内視鏡像

左:胃潰瘍(胃角小弯)の内視鏡像
右:十二指腸潰瘍(球部前壁)の内視鏡像

●胃良性腫瘍(胃ポリープ、胃腺腫)

胃ポリープとは胃粘膜が内側に盛り上がり内腔に突出した隆起であり、通常は良性とされます(一般的には大腸ポリープと比較して癌化することは少ないとされ、切除の必要性は高くありませんが腺腫は癌との鑑別が困難なことが少なくなく内視鏡治療の適応とされます)。ほとんどは過形成性ポリープ、胃底腺ポリープ、腺腫性ポリープ(単に腺腫ともいいます)のいずれかです。過形成性ポリープはピロリ菌陽性の萎縮胃粘膜を持つことが多く、大きなものでは出血の原因になったり癌化することも報告されています。大きなもの(特に2cm以上)は内視鏡的な切除が勧められることもあります。胃底腺ポリープはピロリ菌陰性のきれいな胃粘膜にできることが多く、周囲粘膜と色調が同一の半球状の小ポリープが多発することが特徴です。臨床的には問題となりません。腺腫は前癌病変とされ、最近開発された画像強調内視鏡(IEE;Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡を用いることで腺腫と胃癌の鑑別も含めて精度の高い診断を行うことが可能となっています。胃腺腫と診断された場合は、定期的な内視鏡検査と胃癌との鑑別が困難な病変に対する積極的な内視鏡治療(内視鏡的粘膜切除術;EMR 内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)が重要です。

左上:多発する胃底腺ポリープ 右上:画像強調拡大像

左上:多発する胃底腺ポリープ
右上:画像強調拡大像
左下:発赤呈する過形成性ポリープ
右下:画像強調拡大像

●胃癌

かつては我が国では罹患率・死亡率とも全悪性腫瘍中第1位でした。近年ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染率の低下に伴い罹患率は減少傾向にあるものの、いまだに男性で第1位、女性で第3位です。死亡率は低下傾向にありますが、男性で肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌、肺癌に次いで第3位と死亡率が高く、全体の死亡率が低下傾向にあるものの高齢者における罹患率はむしろ上昇しており早期発見、治療が望まれます。早期癌では症状はほとんどありません。進行癌では胃が重い、食物がつかえるなどの症状が出ることがあります。癌からの出血による黒色便や、貧血が進行して動悸・息切れなどで発見されることもあります。さらに進行すれば食事の通過障害による嘔吐や、全身倦怠感・体重減少などの症状が現れます。胃癌は内視鏡検査や胃レントゲン(バリウム)検査で診断されることがほとんどです。特に内視鏡検査はその存在診断だけでなく生検による病理診断や、画像強調内視鏡(IEE:Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡による範囲診断、超音波内視鏡による深達度診断も可能で、ほとんどの場合診断の決め手になります。さらに全身への広がり・転移を調べる検査として、腹部超音波、CT、MRIなどを用います。胃癌の治療は、病期・部位・組織にもとづいて治療法が細かく決められており、病期の軽いものから内視鏡治療(ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術 EMR;内視鏡的粘膜切除術)、外科的手術(腹腔鏡下手術を含む)、化学療法(抗がん剤治療)を行います。ピロリ菌感染と慢性萎縮性胃炎の合併は胃癌の高危険群である事がわかっており、積極的な除菌治療の対象となっています(除菌成功するとその後の胃癌発生のリスクが1/3程度に低下するとされますが、除菌後も定期的(萎縮が明らかな場合は概ね1年毎)な内視鏡検査が勧められます)。

当院院長は表在型食道癌の内視鏡治療(ESD;内視鏡的粘膜下層剥離術)を得意としており、非常勤として済生会千里病院でESDの指導を行っておりました(平成25~令和5年)ため手術適応にも精通しており適切な施設のご紹介が可能です。

【早期胃癌の内視鏡像】

左上:多発する胃底腺ポリープ 右上:画像強調拡大像

左上:前庭部小弯に白色調の平坦隆起像(0-IIa)
右上:色素散布像
左下:画像強調拡大像
右下:幽門前庭部小弯の比較的浅い陥凹性病変(0-IIc)

【進行胃癌の内視鏡像】

左上:多発する胃底腺ポリープ 右上:画像強調拡大像

左上、右上:陥凹性の病変 良性潰瘍と比較し辺縁が不整で易出血性
左下:中心陥凹する隆起型の病変
右下:平坦な病変 易出血性で周囲との境界が不明瞭

●小腸疾患(原因不明の消化管出血:OGIB)

上部消化管内視鏡及び大腸内視鏡で出血を認めない原因不明の消化管出血に対してカプセル内視鏡での検査が可能です(カプセルは取り寄せが必要なため実施日の調整が必要です)。カプセル内視鏡で病変が疑われる場合、バルーン内視鏡などによる精査の可能な施設を紹介いたします。

●大腸ポリープ

大腸粘膜に隆起する組織を大腸ポリープといいます。ポリープは、直腸とS状結腸に高い確率(60%以上:大腸ポリープ診療ガイドライン2020)で発生し、大きさは数ミリから3センチ程度まであります。小さなポリープではほとんど症状がありませんが、大きくなってくると便潜血や鮮血便という症状がでます。稀に大きなポリープでは腸重積を起こしたり、肛門外に出てしまうこともあります。病理組織学的には大きく腫瘍性、非腫瘍性に分けられます。非腫瘍性の中には、過誤腫性、炎症性、過形成性ポリープがあります。腫瘍性は腺腫(せんしゅ)、癌があります。最も多いのが腺腫で、数年かけて進行しその一部が癌化します。このため腺腫は内視鏡的摘除の適応とされ、6mm以上の腺腫はポリペクトミーやEMR(内視鏡的粘膜切除術)が行われます。5mm以下の腺腫については経過観察が容認されますが、クリーンコロン(全大腸内視鏡検査にて、内視鏡的に腫瘍性病変を認めない状態)を目指し生検切除を行うという考え方も広がってきています(内視鏡的に非腫瘍性病変であることが明らかな場合は生検による確認は必要ありません)。腫瘍性、非腫瘍性ポリープの鑑別には画像強調内視鏡(IEE;Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡による観察が有用です。当院ではなるべくクリーンコロンを目指し、画像強調内視鏡及び拡大内視鏡により腫瘍性ポリープと判断したものについては日帰り手術でのポリペクトミーやEMRを施行しております。

【標準的なポリープ(7mm大)に対するEMR例】

左:画像強調(LCI)拡大観察にてJNET分類2A(腺腫)のポリープと診断

中:生理食塩水を粘膜下層(ポリープの下)に注入し、膨隆させます

右:スネア(輪っか)でポリープを絞扼します

左:スネアに通電(電気を流す)し、ポリープを切除します

中・右:クリップで切除後の創を縫縮します

【サイズの大きいLST(側方発育型腫瘍:低異形度腺腫)のEMR例】

左:直腸~S状結腸の位置に2cm程度の大きめのポリープが見られます

右:インジゴカルミン(色素)を散布し、病変の輪郭をはっきりさせます

左:粘膜下に生理食塩水(この症例はポリープが大きいのでアルギン酸ナトリウム溶液:リフタル®Kを併用)を注入して全体を膨隆させます

右:スネア(輪っか)を病変全体が入るようにかけてゆっくりと縛ります

左:スネアに電気を流し、ポリープを焼灼切除します

右:病変が切除されました 一部に出血が見られます

左:止血・穿孔(穴が開くこと)予防のため、金属製のクリップで切除後の潰瘍(創)を縫縮していきます

右:縫縮が完了(創が治癒するとクリップは自然に脱落し、便と共に排出されます)

大腸腺腫摘除後の経過観察は、3年以内に大腸内視鏡検査による経過観察を行うことが提案されています(大腸ポリープ診療ガイドライン2020)。

また、内視鏡を肛門より挿入することのないカプセル大腸内視鏡検査が実施できる施設は大阪でもまだ多くはありませんが、当院では検査が可能です(保険診療でカプセル大腸内視鏡検査を施行するのには条件があります(一般に大腸内視鏡検査が困難な症例:過去に疼痛が強かったり過長結腸症(腸が長い)などで全大腸検査ができなかった既往がある、腹部の開腹手術の既往があり腸管の癒着が予想されるなど)ので、詳しくはお問い合わせ下さい)。なお、大腸腺腫に対する大腸カプセル内視鏡検査の感度・特異度(内視鏡検査を対照として)は径6mm以上では感度84~94%、特異度64~94% 径10mm以上では感度85~88%、特異度89~97%とされ、U.S.Multi-Society Task Force(MSTF)はカプセル大腸内視鏡検査を有用な大腸癌スクリーニング法の一つとして推奨しています(大腸ポリープ診療ガイドライン2020)。

●大腸癌

大腸癌は近年急激に増加しており、2014年の統計では癌の罹患率は大腸癌が最も高く、死亡数は女性では第1位、男性では肺癌、胃癌についで第3位となっています。大腸癌死亡数では半世紀でおよそ8倍になりました。この理由として、日本人の食生活の欧米化が一因と考えられています。大腸癌の罹患数は女性では乳癌についで第2位、男性では胃癌,肺癌についで第3位です。大腸癌罹患率(大腸癌の新規発生率)を年齢別にみても、大腸癌は男女とも中高年に増加しています。初期には何の症状もありません。進行癌では血便、便が細くなる、残便感、下痢と便秘を繰り返すなど排便に関する症状が出ます。貧血症状が現れてはじめて気がつくこともあります。更に進行すると腸の内腔が狭くなり腹痛や腹鳴、腹部膨満感を起こすことがあります。無症状で便潜血反応が陽性になったり、腫瘍マーカーの上昇による精密検査で発見されることもあります。大腸癌には遺伝性素因が影響することが知られています。親兄弟などに大腸癌、大腸ポリープがある方は40歳頃から積極的に検診を受けるようお勧めします。また、生活習慣に関わる大腸癌のリスク要因として、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられています。
大腸癌の多くは「腺腫」という良性の腫瘍が数年の経過をかけ徐々に悪性化して発生します。「腺腫」すなわち一般にポリープのうちに大腸内視鏡で発見し、その時点で切除してしまえば大腸癌を予防できることになります。
大腸癌の一部(遺伝性疾患や炎症性腸疾患より発生するものなど)は「腺腫」の時期を経ないで、正常な粘膜からいきなり発生してくると考えられています。このようなものの多くは平べったい形をしていたり、周囲の炎症でわかりにくいため早期発見には定期的な内視鏡検査での注意深い観察が必要となります。
大腸癌と診断された場合、病気の状態(進行度、ステージ)を把握するために、血液検査や内視鏡検査、画像検査(CT、MRIなど)が必要です。進行度、年齢、全身の状態などを総合的に判断して治療方針を決定します。内視鏡治療、手術、化学療法(抗癌剤治療)が標準的な治療法です。

当院院長は表在型食道癌の内視鏡治療(ESD;内視鏡的粘膜下層剥離術)を得意としており、非常勤として済生会千里病院でESDの指導を行っておりました(平成25~令和5年)ため手術適応にも精通しており適切な施設のご紹介が可能です。

【進行大腸癌の内視鏡像】

進行大腸癌の内視鏡像

左上:直腸の中心陥凹する隆起性病変

右上:横行結腸の亜全周の病変

左下:上行結腸、ほぼ狭窄しかけている病変

●腹部膨満

腹部膨満は、消化器の日常診療においてよく見られる症候の一つです。結果として心因性の場合も多く見られますがまずは器質的疾患を念頭におき、その際に病因の所在を管腔臓器、実質臓器、腹腔内に大別します。管腔臓器の疾患を疑う場合には腹部レントゲンを行います。腸管ガスや便塊の量・分布を確認することで腸閉塞、消化管運動障害、便秘の診断を行うことができます。実質臓器や腹腔内の異常を疑う場合には腹部超音波検査が有用です。腹水の有無や肝脾腫や腫瘍、急性膵炎での膵腫大や周囲の腹水の有無を調べることができます。必要に応じ内視鏡検査を追加していきます。

●便通異常(下痢、便秘)

下痢の診断を進める上では急性(2週間以内)か慢性(4週間以上)かの判断が重要です。急性下痢の90%以上は感染によるといわれています。食事内容の問診に加え、迅速診断キット、便培養、生検(内視鏡検査での)などを適宜行います。慢性下痢の原因は多様であり、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、吸収不良症候群、腸管慢性感染症、大腸腫瘍などが挙げられます。内視鏡検査、腹部超音波検査、消化管造影、腹部CT、血液検査などで器質的疾患を鑑別し、否定された場合には機能性障害である過敏性腸症候群を考えます。

便秘は国民の約30%が罹患している頻度の高い疾患であるにも関わらず、正しい病態理解に基づいた適切な治療が行われていないことが多くみられます。機能性便秘は大きく結腸通過時間正常型、遅延型、便排泄障害型に分類されます。過半数は結腸通過時間正常型で、便秘症状はあるが結腸通過時間は正常な場合を指し食物繊維で便を軟化・膨化させることで良好な反応を示すことが多いとされます。結腸通過時間遅延型は、腸蠕動運動の低下により通過時間の遅延を認める便秘です。通常便意は直腸内に便塊が貯留した段階で生じるため便塊がなかなか輸送されないこのタイプでは便意が消失することが多く見られ、食物繊維の摂取により停滞していた便の容積がさらに増大し症状が悪化する場合があり注意が必要です。便排泄障害型は直腸内の便塊の排出障害であり、浣腸の乱用などで直腸肛門反射が減弱されると便が肛門内に充填されているにも関わらず内肛門括約筋が弛緩されずに排便困難となります。

便秘の薬物治療は本邦では長らくセンナなどの刺激性下剤と酸化マグネシウムなどの塩類下剤(浸透圧性下剤の一種)が使われてきましたが、刺激性下剤(センナ、アロエ、大黄など)の長期間の連用では大腸メラノーシスを生じ結腸壁内神経叢の障害により腸管運動の低下や腸管拡張・伸長がみられる(本来1日2錠程度の薬剤が極端な例では1日100錠くらい服用しても出ない、ということも時折見られます)ことが問題となっておりました(※なお、刺激性下剤は効果の優れた薬剤であり、適切な使用においての問題はありません)。

大腸メラノーシスの大腸粘膜

左:正常大腸粘膜  右:刺激性下剤長期連用による大腸メラノーシスの大腸粘膜

近年、新しい作用機序の薬剤が登場してきており「慢性便秘症診療ガイドライン2017」が発行されました。
上記ガイドラインで「推奨の強さ1(強く推奨される)、エビデンスレベルA」とされるものは上皮機能変容薬および浸透圧性下剤とされ、上皮機能変容薬には近年上市された薬剤(ルビプロストン:アミティーザ®、リナクロチド:リンゼス®、エロキシバット:グーフィス®)があります(厳密にはエロキシバット:グーフィス®は胆汁酸トランスポーター阻害剤ですが、広義の上皮機能変容薬と考えられます)。浸透圧性下剤には古典的なマグネシウム製剤の他に近年ではモビコール®(大腸内視鏡検査の前処置の下剤を小分けしたもの)やラグノスNFゼリー®(肝性脳症:高アンモニア血症の治療薬を飲みやすく改良したもの)などの新薬が登場しており、いずれも良好な結果が得られています。
漢方薬は上記ガイドラインでは「推奨の強さ2、エビデンスレベルC」と若干落ちるものの大建中湯など多くの論文に効果を認められ、本邦でも広く使用されており当院でも積極的に使用していますので漢方をご希望の方は是非ご相談下さい。
なお、便秘薬は個人や体調による効果の違いが顕著であり、当院では年齢や腎機能など患者さんの背景因子を考慮し薬剤の選択を行っており、また実際使用しての患者さんの感触を踏まえて薬剤の変更、調整を行っています。
当然ながら、大腸癌などの器質性疾患も考慮し40歳以上で大腸内視鏡検査を一度も行っていない方、過去に大腸ポリープを指摘(切除)されたがずいぶん(3~5年以上)期間が経った方は大腸内視鏡検査をご検討下さい。

便秘・下痢などについては下記(外部:ヴィアトリス製薬サイト)もご参照下さい。

おなかのお話.com

●過敏性腸症候群

通常の臨床検査(大腸内視鏡、血液検査、CTなど)で明らかな異常が認められないにも関わらず、腹痛や腹部の不快感を伴って、便通異常(便秘や下痢)が長く続く疾患です。我が国における有病率は人口の14.2%、内科外来患者の31%占めるほど頻度の高い病気です。便通の状態により、便秘型、下痢型、交代型の3つに分類されますが、男性では下痢型、女性では便秘型が目立ちます。過敏性腸症候群では、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常の3つが認められます。ただ、これらの異常を引き起こす真の原因はわかっていません。一部の患者さんでは感染性腸炎の後に発症することが明らかになっており、何らかの免疫異常が関わっている可能性も指摘されています。ストレスは、症状を悪化させる要因となります。自覚症状からの診断基準としてRome IV基準があり、これに基づいて診断されますが、大腸癌をはじめとする消化器の癌ならびに炎症性腸疾患といった器質的異常を除外することが重要であり、大腸内視鏡などの検査が重要です。当院では消化器内視鏡専門医による質が高い、そして鎮静剤(麻酔)使用による苦痛の少ない大腸内視鏡検査が可能です。


※IBSの診断基準(Rome IV基準)

最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上があること

  1. 排便と症状が関連する
  2. 排便頻度の変化を伴う
  3. 便性状の変化を伴う

期間としては6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は上記基準をみたすこと


治療は生活習慣を評価し、過敏性腸症候群の増悪因子(偏食、食事量のアンバランス、夜食、睡眠不足、心理社会的ストレス)があれば改善を促します。消化管を標的とした薬物療法(下記)、プロバイオティクス(乳酸菌;ビオフェルミン®、ラックビー®、ビオスリー®などや酪酸菌;ミヤBM®)が有効とされますが、無効な場合は抗不安薬、抗うつ薬の使用を検討します。


IBSに対する薬物治療

  • a.高分子重合体
    ポリカルボフィルカルシウム(コロネル®)に代表される高分子重合体は、小腸、大腸で大量の水分を吸収し保水作用を示すようになり、便は適度の水分を含み容積も増すようになります。安全性も高く、IBS患者さんの基本的な治療薬と位置づけられています。
  • b.セロトニン受容体(5-HT3受容体)拮抗薬
    ラモセトロン塩酸塩(イリボー®)など5-HT3受容体拮抗薬は下痢を抑制し、便形状や便意切迫感を改善させ、腹痛や腹部不快感などの症状を改善させます。
  • c.抗コリン薬
    メペンゾラート臭化物(トランコロン®)、チキジウム臭化物(チアトン®)など抗コリン薬は腸管運動の活発化を抑制することで効果を発揮します。下痢型IBSの場合に他剤と併用することも可能です。
  • d.便秘治療薬
    従来、便秘に対しては浸透圧性下剤である酸化マグネシウム、刺激性下剤であるセンノシド製剤やピコスルファートが使用されてきました。近年便秘に対し上皮機能変容薬と呼ばれるこれまでの便秘治療薬とは異なる作用機序の便秘治療薬が利用可能になってきました。慢性便秘症診療ガイドライン2017では上皮機能変容薬が浸透圧下剤(高マグネシウム血症の心配がなく小児にも使用可能なポリエチレングリコール製剤;モビコール®も2018年より使用可能となっています)と並び推奨されており、クロライドチャネルアクチベーター(アミティーザ®)やグアニル酸シクラーゼC受容体作動薬(リンゼス®)や胆汁酸トランスポーター阻害薬(グーフィス®)が使用できます。これらの薬剤はいずれも便秘型IBSに対する投与が可能です。

●虚血性大腸炎、大腸憩室炎

虚血性腸炎は大腸の急な血流障害が起きた後、血流が再開するのに伴って発生する臓器傷害によって起こります。大半は突発する腹痛とそれに引き続き数時間のうちに発症する下痢、血便という特徴的な経過をとります(例外もあります)。好発部位は左側結腸(下行結腸、S状結腸)で直腸や上行結腸はまれとされています。血流傷害を起こす機序としては、便秘、いきみ、強い下剤や浣腸の使用、感染性腸炎などがあげられます。保存的治療としては食事制限、補液が主であり、炎症所見や腹痛が強い場合は抗菌剤の使用も検討されます。大半を占める軽症例で経口摂取可能な場合には入院は不要ですが、症状が強い場合は入院加療目的に適切な施設を紹介します。
大腸憩室とは大腸の粘膜の弱い部分が外側に突出するもので、腸管運動異常による腸管内圧の亢進や腸管壁の脆弱性が関係すると言われ加齢に伴い発生率は上昇します。憩室の存在だけでは無症状のことが多いのですが感染による炎症を起こすと腹痛や発熱を伴ってきます。急性虫垂炎や感染性腸炎、尿路感染症、婦人科疾患との鑑別が重要となります。穿孔(腸に穴が空くこと)、膿瘍(膿を作ること)などの合併症を伴わない場合は保存的に腸管安静(食事制限)、抗菌剤の投与を行います。高熱や腹膜炎を疑う症状がない場合(歩いた時に響いたりしない、おなかを押さえて離した時に痛みが増強しない)は通院による内服治療が可能ですが、症状が強い場合は入院加療目的に適切な施設を紹介します。

●炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)には、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)とクローン病(Crohn's disease:CD)があり、いずれも再燃と緩解を繰り返す下痢、血便や腹痛を伴った難治性の慢性炎症疾患で国の難病(特定疾患)に指定されています。潰瘍性大腸炎は大腸で発症し、クローン病は消化管全域において発症します。

毛細血管透見性消失及び易出血性(左上)、潰瘍形成(右上)、正常粘膜(下段)

【毛細血管透見性消失及び易出血性(左上)、潰瘍形成(右上)、正常粘膜(下段)】

本症の原因は不明ですが、遺伝子的な素因によって、通常の腸内細菌に対して異常な免疫応答を示すことが病態発症につながることが推定されています。潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)とも、診断技術の進歩に伴う部分もありますが明らかに増加傾向です。

(大阪医科大学附属病院HPより)

症状(下痢、血便、腹痛のいずれか)や貧血などの血液検査異常から炎症性腸疾患が疑われ、画像(主として内視鏡)検査にて特徴的な所見が認められた場合に診断されます。内視鏡検査や手術の際に同時に採取される検体の病理検査の所見や、肛門病変の所見などが診断に有用な場合もあります。

治療法には、生活指導、食事療法、アミノサリチル酸製剤(ペンタサ®:特にクローン病 アサコール®・リアルダ®:特に潰瘍性大腸炎)やステロイド剤(プレドニン®、ゼンタコート®:クローン病のみ)、免疫抑制(調整)剤(チオプリン製剤:イムラン®、アザニン®、ロイケリン®)などの薬物療法が挙げられます。また、これらの治療が奏功しない場合には、生物学的製剤(詳細下段参照)が使用されます。

生物学的製剤 製剤名(一般名) 特徴
抗TNFα製剤 レミケード®(インフリキシマブ)
ヒュミラ®(アダリムマブ)
シンポニー®(ゴリムマブ)
・炎症を起こす物質「TNFα」の働きを抑える
・炎症の程度が強くステロイドなどで炎症を抑えられない場合に使用
・ヒュミラ®、シンポニー®は自己での皮下注射が可能
抗α4β7インテグリン
抗体製剤
エンタイビオ®(ベドリズマブ) ・α4β7インテグリンの働きを邪魔してリンパ球が腸に移動してくるのを防ぎ、炎症を抑える
・炎症の程度が強くステロイドなどで炎症を抑えられない場合に使用
抗IL-12/23p40抗体製剤 ステラーラ®(ウステキヌマブ) ・炎症に関与するIL(インターロイキン)のうちIL-12とIL-23を抑える(IBD:潰瘍性大腸炎とクローン病で関係するとされる)
・中等度~重症のクローン病または潰瘍性大腸炎に使用
α4インテグリン阻害剤 カログラ®(カロテグラストメチル) ・経口剤(1日3回)
・α4インテグリンを標的とし、リンパ球が腸に移動してくるのを防ぎ、炎症を抑える
・中等度の炎症で5-ASA内服で炎症を抑えられない場合に使用
抗IL-23p19抗体製剤 スキリージ®(リサンキズマブ) ・炎症に関与するIL(インターロイキン)のうちIL-23を抑える
・中等度から重症の活動性クローン病で使用
・維持療法(皮下注射)での効果減弱時には静脈注射の追加が可能
抗IL-23p19抗体製剤 オンボー®(ミリキズマブ) ・炎症に関与するIL(インターロイキン)のうちIL-23を抑える
・中等度から重症の潰瘍性大腸炎で使用
・維持療法(皮下注射)での効果減弱時には静脈注射の追加が可能
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤 ゼルヤンツ®(トファシニブ)
ジセレカ®(フィルゴチニブ)
リンヴォック®(ウパダシチニブ)
・白血球内でヤヌスキナーゼ(JAK)というサイトカイン産生に重要な酵素の働きを抑制し、サイトカイン産生を抑える
・経口薬
・中等度~重症の潰瘍性大腸炎で使用

(大阪医科大学附属病院HPより)

(大阪医科大学附属病院HPより)

薬物治療ではありませんが、血球成分除去療法が行われることもあります。多くの場合内科治療で症状が改善しますが、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要となります。なお、潰瘍性大腸炎、クローン病は厚生労働省より指定難病とされていますが、当院院長は大阪府より難病指定医に認定されています。

消化器内科で扱う症候と疾患

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